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相続に必要な戸籍の集め方——広域交付制度でどう変わった?

相続に必要な戸籍の集め方——広域交付制度でどう変わった?

相続に必要な戸籍の集め方——広域交付制度でどう変わった?

相続の手続きを始めようとすると、まず必ずぶつかるのが「戸籍集め」です。
「どこに頼めばいいの?」「何通必要なの?」——よくいただく疑問です。

「相続をおわりに。」司法書士の尾張です。

令和6年3月から始まった広域交付制度で、戸籍の取得はかなり便利になりました。
ただし、知っておかないと詰まるポイントも出てきています。

実務目線でポイントを解説します。


目次

  1. なぜ「すべての」戸籍が必要なのか
  2. 基本:本籍地の自治体ごとに請求する
  3. 広域交付制度——「全部ください」で一括取得できる
  4. 広域交付、3つの落とし穴
  5. まとめ

なぜ「すべての」戸籍が必要なのか

相続手続きでは、故人の出生から死亡までの、すべての戸籍が必要になります。

理由は「相続人を確定する」ためです。

誰が法定相続人になるのかは、戸籍で証明しなければなりません。
認知した子がいないか、前婚で子どもがいないか——
こうした事実はすべて戸籍に記録されています。
「うちはシンプルな家族だから」と思っていても、
戸籍を追っていくと予想外の記録が出てくることがあります。

「古い戸籍まで必要なんですか?」とよく聞かれますが、答えはYesです。
昭和・平成の法改正で様式が変わった際の古い戸籍(改製原戸籍・除籍謄本)も含めて、全部揃える必要があります。

シンプルなケースでも数通、本籍の移動が多かった方や御高齢だった場合には十何通になることも普通にあります。


基本:本籍地の自治体ごとに請求する

戸籍は本籍地を管轄する自治体が保管しています。
そのため基本的には、故人が本籍を置いた自治体ごとに請求が必要です。

たとえば「蟹江町→名古屋市→東京都品川区と本籍を移していた」という場合、
蟹江町・名古屋市・品川区の3か所にそれぞれ請求することになります。

費用の目安

書類の種類 手数料(1通)
戸籍謄本(現在の戸籍) 450円
除籍謄本・改製原戸籍謄本 750円

本籍の移動が多い方や古い戸籍が多い場合は、合計で数千円になることもあります。

郵送での請求も可能です。各自治体へ、請求書・本人確認書類のコピー・定額小為替・返信用封筒を同封して送ります。

この定額小為替(ていがくこがわせ)がなかなかのクセモノです。戸籍代を払うための“郵便局専用の金券”で——

  • 郵便局の窓口で、平日に買う必要がある(コンビニやネットでは買えない)
  • しかも1枚につき200円の発行手数料がかかる(450円の戸籍を取るのに、小為替代が別途200円…)
  • 何枚必要かは取ってみないと読めないことも多く、多めに買うか、足りず買い足すことに

さらに郵送請求は、送る→自治体が処理→返送、で1か所あたり2週間前後かかることも珍しくありません。そして、これを本籍を置いた自治体の数だけ繰り返す必要があります。

実は、相続手続きで一番時間を食うのがここです。親御さんが転勤などで本籍を点々とさせていた場合、戸籍の郵送請求だけで2〜3か月かかってしまうことも、普通にあります。

この“時間地獄”を一気にラクにしたのが、次の広域交付制度です。


広域交付制度——「全部ください」で一括取得できる

令和6年3月1日から、戸籍の広域交付制度が始まりました
(戸籍法改正・令和6年3月1日施行)。

それまでは本籍地の自治体ごとに請求する必要がありましたが、
この制度により全国どこの市区町村の窓口でも、まとめて請求できるようになりました。

複数の自治体に散らばっていた戸籍が、お近くの窓口で一括取得できます。
蟹江町の方なら蟹江町役場で、他の自治体にあった戸籍もまとめて取れます。
これはめちゃくちゃ便利です。

ついでに取っておくもの(自分の分)

ご自身で集める場合は、広域交付で戸籍を取るとき、自分(相続人)の住民票と印鑑証明書も一緒に取っておきましょう。相続登記や金融機関の手続きで必要になりますが、被相続人の書類に気を取られて自分の分を忘れる方が多いです。

(※当事務所にご依頼の場合は、住民票はこちらで取得します。ご本人しか取れない印鑑証明書だけご用意ください。また「被相続人の住民票の除票・戸籍の附票」も必要ですが、これは広域交付では取れません。落とし穴③で説明します。)


広域交付、3つの落とし穴

広域交付は便利ですが、使う前に知っておいてほしいことが3つあります。

①とにかく時間がかかる

広域交付の裏側では、請求先の自治体が本籍地の自治体に確認を取りながら発行しています。
自治体どうしのやり取りが挟まるため、その場ですぐもらえると思っていると痛い目を見ます。

名古屋市のあまり混んでいない支所で請求をかけても
「朝いただいて、夕方来てください」と言われるケースがあります。
東京から他県の戸籍を広域交付しようとしたら「2日かかります」と実質断られ、
結局当事務所で本籍地に郵送請求をかけた——なんてこともありました。

処理に慣れた自治体かどうか、人員の状況によっても大きく変わります。
「15分で取れる」とは思わないようにしてください。

急いでいる場合や、時間が読めない場合は、
本籍地への郵送請求を並行して使う方が早いケースもあります。

ちなみに——私たちの地元・蟹江町役場は、職員さんが優秀なのか、当日中に出してもらえることもあります。もちろん「すぐもらえる」と決めつけるのは禁物ですが、まず窓口で「今日中にいけますか?」と聞いてみる価値はあります。自治体によって本当にバラつくので、ダメ元で確認を。

②取れるのは“タテの血縁”だけ——兄弟姉妹は取れない

広域交付で取れるのは、自分から見て“まっすぐ上下につながる血縁”——親・子・祖父母・孫など(これを「直系(ちょっけい)」といいます)の戸籍だけです。
横に広がる兄弟姉妹・おじおば・甥姪(こちらは「傍系(ぼうけい)」)の戸籍は、広域交付では取れません。

これが問題になるのが、兄弟姉妹が相続人になるケースです。
子どもも親も先に亡くなっていて兄弟姉妹が相続人になる場合、
その兄弟姉妹の戸籍は本籍地の自治体に個別請求するしかありません。

さらにやっかいなのが、窓口で「請求できる権限を証明してください」と言われる問題です。

具体的には、こんな“堂々めぐり”が起きます。

  1. お兄ちゃんが亡くなった。子どもがいないので、弟の自分が相続人になった。
  2. 「相続人なんだから、お兄ちゃんの戸籍を取れるはず」と窓口へ行く。
  3. でも窓口で「相続人だと証明できる戸籍を見せてください」と言われる。それには「お兄ちゃんに生涯子どもがいなかった」とわかる、お兄ちゃんの出生〜死亡の戸籍が要る。
  4. ところがお兄ちゃんは結婚して親の戸籍から抜けている。その戸籍を取るにも…また「相続人だと証明する戸籍」を出せと言われる。
  5. でも、その証明の戸籍を取りに、今ここへ来ているわけで——。

戸籍を取るために、戸籍が要る。完全に堂々めぐりで、制度上の論理矛盾です。一般の方がこれを自力で突破するのは、かなりしんどいです。

これで自治体の窓口で跳ねられたり、途方に暮れる方が後を絶ちません。

司法書士には職務上請求書という書類があり、
こうした疎明資料なしに相続手続き上必要な戸籍を請求できます。
兄弟姉妹相続でも、このあたりはこちらで詰まらずに進めることができます。

③直系の戸籍は取れても「住民票の除票・戸籍の附票」は対象外——ここが片手落ち

意外と知られていませんが、広域交付で取れるのは“戸籍(戸籍謄本・除籍・改製原戸籍)”だけです。相続登記で必須の「被相続人の住民票の除票」や「戸籍の附票」は、広域交付の対象外——これらは戸籍ではなく“住民票系”の書類だからです。

この2つは、登記簿上の住所と亡くなった方を繋ぐために必要なのですが、取れるのは亡くなった時の住所地の自治体本籍地の自治体だけ。つまり——

蟹江町役場の窓口で、遠方に住んでいた親御さんの“戸籍”は広域交付でまとめて取れた。でも、肝心の住民票の除票・附票は、結局その遠方の自治体へ郵送請求するしかない。

「便利になった!」と思いきや、遠方に住んでいた・本籍を遠くに置いていた親御さんだと、結局この1〜2通のために郵送請求から逃げられない。——そう、ここでまた、定額小為替を平日に郵便局で買って、請求書と一緒に郵送して、返送を待って…の往復が発生します。「戸籍は広域交付で一発だったのに、最後の住民票系の1〜2通で、結局2週間待ち」。正直、制度としては少し片手落ちです。広域交付で“戸籍は楽になったのに、住所をつなぐ書類で詰まる”——ここでつまずく方が、実は少なくありません。


集め終えてからも大変——「束を使い回す」時間地獄

苦労して戸籍一式を集めたら終わり……ではありません。集めた戸籍の束を、手続き先に提出して回る必要があります。

たとえば、不動産(法務局)と金融機関3行があったとします。戸籍の束が1セットしかないと、こうなります。

法務局に提出 → 返ってくるのを約1か月待つ → A銀行へ → また約1か月待つ → B銀行へ → …

1か所が終わってから次、それが終わってから次……と“順番待ち”がどんどん積み上がるわけです。これを避けるには、戸籍一式を提出先の数だけ(この例なら4セット)用意して同時に出すしかなく、そうすると戸籍の手数料だけで数万円かかってしまいます。

(同じことは遺産分割協議書にも言えます。1通だけだと使い回しで待ち時間が出るので、手続きの数だけ作っておけば同時並行で進められます。→遺産分割協議書の書き方——自分でもできる?司法書士が本音で解説

ここで効くのが法定相続情報一覧図です。集めた戸籍を法務局に一度出せば、相続関係をまとめた証明書を無料で何通でも交付してもらえ、戸籍の束の“代わり”として各手続きに使い回せます。複数の手続きを同時並行で進められ、戸籍を何セットも取り直す費用もかかりません。

→ 当事務所にご依頼いただければ、この法定相続情報一覧図を必要な枚数そろえて、各手続きを同時に走らせます。結局、費用も手間も減らせることが多いです。仕組みは法定相続情報一覧図とは?——便利な場面と、そうでもない場面で解説しています。


まとめ

ポイント 内容
必要な戸籍 故人の出生〜死亡まで全部。十何通になることも普通
費用目安 戸籍謄本1通450円、除籍・改製原戸籍は750円
広域交付 令和6年3月〜。近くの窓口で一括取得できて便利
広域交付の注意 時間がかかる/直系親族のみ/住民票の除票・附票は対象外(結局その自治体へ郵送請求)
郵送請求の現実 定額小為替(平日に郵便局・1枚200円)+往復2週間〜。本籍が点々だと戸籍集めだけで2〜3か月
兄弟姉妹相続 戸籍取得で「卵が先か鶏が先か」問題が起きやすい

→ 相続登記に必要な書類の全体像は相続登記に必要な書類一覧——「あると思ったら足りなかった」を防ぐためにで解説しています。
→ 集めた戸籍を1枚に集約する「法定相続情報一覧図」については法定相続情報一覧図とは?——便利な場面と、そうでもない場面をご覧ください。


正直なところ、戸籍集めそのものは、時間さえかければご自身でもできます。でも——ふだん相続のルールや戸籍制度になじみのない方が一から進めようとすると、「どの戸籍が必要か」「どこに請求するか」「広域交付で取れる/取れない」を調べて理解するところから始めることになります。その勉強と試行錯誤にかかる時間まで含めて考えると、最初から専門家に頼んでしまったほうが、結局ラクで早い——というのが本音です。

当事務所にご依頼いただいた場合、
戸籍の収集はほぼすべてこちらで対応します。
何十通あっても全部こちらでやります。
ご準備いただくのは、ご本人しか取れない印鑑証明書だけで大丈夫です(住民票も含め、ほかの書類はこちらで取得します)。


相続をおわりに。

「うちの場合はどうなんだろう?」と思ったら、まずはお気軽にご相談ください。

📞 電話:0120-542-184(平日9:00〜18:00)
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【執筆者】
司法書士尾張由晃 司法書士法人せと事務所代表
愛知県司法書士会 登録番号:第1981号
蟹江町在住、実務歴10年以上。同じ地元民として、単なる事務作業ではない「生涯に寄り添うサポート」をお約束します。

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