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2026.05.19 その他

遺産分割協議書の書き方——自分でもできる?司法書士が本音で解説

遺産分割協議書の書き方——自分でもできる?司法書士が本音で解説

蟹江町のご相談者からよく聞かれる一言があります。

「遺産分割協議書って、自分でも書けますか?」

「相続をおわりに。」司法書士の尾張です。

正直に答えます。書けるっちゃ書けます。でも、書き方を一歩間違えると手続きが止まったり、知らないうちに税金で数百万円損したりします。

この記事では、遺産分割協議書に最低限必要な要素から、不動産・預金口座の具体的な書き方、換価分割・代償分割の文例、さらに実際にあった失敗事例まで、実務でそのまま使ってきた内容をお伝えします。


遺産分割協議書に、決まった書式はない

遺産分割(相続人全員で「誰が何を相続するか」を決めること)の制度や方法については、遺産分割とは?方法の種類と決め方を司法書士が解説をご覧ください。

ここで押さえておきたいのは一点だけです。

遺産分割協議「書」に、法律上定められた書式はありません。

民法第907条は「共同相続人はいつでも協議で遺産の分割をすることができる」と定めていますが、その協議書をどう書くかは、何も規定されていないんです。

つまり、極論——

「お父さんの財産については全部お母さんが相続します。」

これに相続人全員が署名・押印すれば、遺産分割協議書としては法的に成立します。

ただし、「成立する」と「手続きで使える」は、まったく別の話です。


最低限必要な4つの要素

1. 被相続人を特定する

「お父さん」では、どこの誰のお父さんかわかりません。法務局にも銀行にも「誰の相続ですか?」と言われて止まります。

一般的には以下を記載します。

  • 最後の住所
  • 氏名
  • 生年月日
  • 死亡年月日

2. 誰が何をもらうかを明確にする

「全財産をAが相続する」ならシンプルです。

相続財産の全ては相続人Aが相続する。

これで十分です。財産を分ける場合は、何をもらうかを明確にしないと後々「言った言わない」が発生します。具体的な書き方は後述します。

3. 相続人全員が実印で署名押印する

ここは誤解が多いポイントです。

普通のハンコではいけません。実印が必要です。

そして実印だけでも足りず、印鑑証明書とセットで提出するのが実務の基本です。

印鑑証明書の有効期限は、手続きによって異なります。

手続き 印鑑証明書の期限
相続登記(法務局) 期限なし(何年前のものでもOK)
金融機関の手続き 一律ではないが6ヶ月以内を求められることが多い

相続登記については、印鑑証明書に有効期限がありません。10年前に取ったものでも、形式が整っていれば使えます。これ、意外と知られていません。

金融機関は各行の社内規程によって異なりますが、「6ヶ月以内のものを持ってきてください」と言われることがほとんどです。複数の金融機関で手続きがある場合は、まとめて取得しておくと効率的です。

4. 日付を入れる

協議が成立した日付を記載します。書いた日ではなく、全員の合意が整った日です。


財産ごとの「特定」の方法

不動産の書き方

「自宅をAさんが相続する」と書いても、法務局は動いてくれません。登記記録(登記簿)に合わせた正確な表記が必要です。

所在    愛知県海部郡蟹江町大字○○
地番    ○番○
地目    宅地
地積    ○○○.○○㎡

家屋(建物)があれば、家屋番号・種類・構造・床面積も必要です。これらは登記事項証明書(いわゆる「登記簿謄本」)を法務局で取得すれば確認できます。蟹江町の不動産であれば、管轄は名古屋法務局津島支局です。

ポイント:「相続財産の全てをAが相続する」という書き方であれば、個別の不動産を特定しなくても法務局・金融機関ともに手続きを進められます。特定が必要になるのは、財産を分けるときです。

銀行預金の書き方

こちらも正確な特定が必要です。「○○銀行の預金をBさんが相続する」では通りません。

金融機関名    ○○銀行
支店名        ○○支店
口座種別      普通預金
口座番号      ○○○○○○○

口座番号は通帳やキャッシュカードで確認できます。残高は書かなくてOKです(手続き時に残高証明書を別途取得します)。


分け方が複雑になる場合

ここからが、「書けること」と「ちゃんと書けること」の差が出るところです。

換価分割——売って代金を分ける場合

「とりあえずAの名義にしておいて、売ったお金を分けよう」というケースはよくあります。

ところが、協議書に「Aが相続する」とだけ書くと、法律上はAの財産になってしまいます。 売却後にBへお金を渡すと、相続ではなく「贈与」として扱われ、贈与税がかかる可能性があります。

換価分割を意図するなら、以下のように明記が必要です。

第○条 相続財産中、次の不動産については相続人Aが相続し、これを換価(売却)した上で、売却代金から売却に要した費用を控除した残額を、相続人Aと相続人Bが各2分の1の割合で取得する。

「売って分ける」と明示しておくことで、金銭の移動が「換価分割の精算」として処理できます。

また、換価分割のメリットはそれだけではありません。不動産を管理している相続人(現地に住んでいる方など)が、単独で売却手続きを進められます。

「売って代金を分けたい」という目的は同じでも、方法を知らないと全員の名義で相続してしまいがちです。気持ちとしては自然なんです、全員で売るなら全員の名義、と思いますよね。でも換価分割という方法を知っていれば、代表者一人が窓口になって売却手続きを完結できます。同じ結果なのに、遠方の相続人が何度も飛行機や新幹線で来なくて済む。私、尾張のところへ相談に来てくれた方の中にも、現物分割してしまったがために売却のたびに全員が集まらなければならず、交通費と時間をかなり使っていたご家族がいました。知っていれば、選べたんです。

代償分割——一人が相続して、他の人にお金を払う場合

Aが不動産を相続する代わりに、Bへ現金を支払う方法です。

第○条 相続財産中、次の不動産については相続人Aが相続する。
第○条 相続人Aは、前条の不動産を取得する代償として、相続人Bに対し金○○○万円を令和○年○月○日までに支払う。

代償分割の大きなポイントは、その不動産に居住していた相続人が相続することで、売却時にマイホーム特別控除(3,000万円控除)が適用される場合があることです。

尾張のところに来られた方で、こういう方がいました。

親の自宅に長く住んでいた長男がいて、兄弟で話し合った結果「売って代金を分けよう」という結論になったそうです。でも「どうしても売却して分けたい」という流れから、3人で持分を分ける現物分割にして登記。いざ売却してみると、マイホーム控除が使えず、数百万円単位で税金を余分に払うことになっていました。

代償分割という選択肢を知っていれば、長男名義で相続→売却→代償金支払いという流れで、控除が効いてまったく違う結果になっていたはずです。書き方ひとつで、こんなに変わります。

収益不動産がある場合

アパートや駐車場など、収益を生む不動産の場合は注意点があります。

法律の原則上、相続開始から遺産分割が完了するまでの間の収益(家賃・駐車場代など)は、相続人全員のものになります。費用負担も同様です。

これをきっちり清算しようとすると、家賃収入を月ごとに按分して、修繕費や管理費も分担して……と、計算だけで相当な手間になります。そのためウチでは、まずこの原則をきちんとご説明したうえで、ほとんどの方に合意いただいて、以下のように「その不動産をもらった人が収益も費用もまとめて引き継ぐ」という簡便な清算条項を入れるようにしています。

第○条 相続財産中、次の不動産及び不動産内に有する家財道具等については相続人Aの所有とする。また、当該不動産から発生した収益及び費用も承継するものとする。

もちろん、きっちり精算したいというご希望があれば、それに対応した別の書き方もあります。ただそもそも、こういう選択肢があること自体を知らなければ、選ぶことすらできません。


代襲相続・数次相続が絡む場合

相続人の中に、すでに亡くなっている方がいる場合(代襲相続・数次相続)、協議書の相続人の書き方が問題になります。

実務では「相続人Aの代襲相続人B」「相続人Aの相続人B」のように肩書きをつけて書くことが求められることがあります。

正直に言うと——この書き方に明確な法律上の根拠があるのか、尾張はちょっと疑問に思っています。法務局から「こう書いてください」と言われることもありますが、条文に明確な規定はないんですよね。とはいえ、書いた方がトラブルになりにくいのも事実です。

そこで、うちの事務所では代襲でも数次でもまとめて対応できるよう、前文にこの一文を入れることにしています。

下記の者の死亡により開始した相続につき共同相続人全員は、その相続財産について次のとおり遺産分割の協議を行い確定した。なお、代襲相続、数次相続が発生している場合において、相続人は承継したすべての地位をもって遺産分割協議を行った。

代襲・数次の両方を、この一文でカバーしています。


まとめ——こういう場合は相談に来てください

遺産分割協議書は、一人がすべての財産を相続するシンプルなケースであれば、ご自身で作成することも十分できます。

ただ、以下に当てはまる場合は、協議書を作る前に一度ご相談ください。

  • 不動産を将来売る可能性がある(現物分割が正解の場合もありますが、換価・代償を含めた選択肢を比較したうえで選ぶ必要があります)
  • 収益を生む不動産(アパート・駐車場など)がある
  • 代襲相続・数次相続が発生している
  • 複数の相続人で割合や複雑な分け方をする

遺産分割協議書は、書けちゃうことはあります。でも、書けちゃった内容が手間・費用・時間のどれをとってもベストな選択かどうかは、別の話です。

選択肢を知らなければ、そもそも選ぶことができません。換価分割も代償分割も現物分割も、それぞれメリット・デメリットがあります。司法書士に相談に来ていただければ、その時点で取れる方法を全部並べて、それぞれの得失をお伝えできます。決めるのはご本人たちで構いません。ただ、選択肢を知った状態で決めてほしいんです。

そして遺産分割協議書は、一度全員が署名・押印したら「やっぱりやり直したい」が原則できません。後悔する前に、一度声をかけてください。

蟹江町で相続のことなら、「相続をおわりに。」司法書士の尾張にお任せください。


相続をおわりに。

「うちの場合はどうなんだろう?」と思ったら、まずはお気軽にご相談ください。

📞 電話:052-209-6965(平日9:00〜18:00)
📱 LINE:こちら(24時間受付・相談無料)
📧 メール:owari@shihouseto.com

蟹江町で相続のことなら、蟹江町在住司法書士の私、尾張がすぐに対応いたします。


参考


【執筆者】
司法書士尾張由晃 司法書士法人せと事務所代表
愛知県司法書士会 登録番号:第1981号
蟹江町在住、実務歴10年以上。同じ地元民として、単なる事務作業ではない「生涯に寄り添うサポート」をお約束します。

最終更新:2026年5月19日

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