株・投資信託の相続手続き——証券口座の調べ方から換金・分割まで
「親が株をやっていたみたいなんですが、どこに口座があるかわからなくて」
「相続をおわりに。」司法書士の尾張です。
証券口座の相続は、銀行口座とは少し勝手が違います。まず「口座がどこにあるか」から調べないといけないケースが多い。手続きの流れを整理します。
目次
- 証券口座は書類が手元にないことが多い
- 口座がどこにあるか調べる——ほふりへの照会
- 口座がわかったら——証券会社への手続きの流れ
- 書類は複数部まとめて用意する
- 解約・換金の流れ——銀行口座と何が違うか
- 株式を「分ける」ときの注意点
- 信頼関係が不安なときは司法書士へ
- まとめ
証券口座は書類が手元にないことが多い
銀行口座であれば、通帳や届出書類が手元に残っていることが多いです。でも証券口座は違います。
特にネット証券の場合、配当金の入金通知もWeb上で完結します。口座開設時の書類くらいしか手元に残っておらず、時間が経つとそれも見当たらない——という状況になりがちです。
「株をやっていたらしい」「でもどこの証券会社かわからない」というご相談は、私、尾張のところにもよく来ます。
口座がどこにあるか調べる——ほふりへの照会
国内の株式・投資信託は、株式会社証券保管振替機構(通称:ほふり)が一括管理しています。どこの証券会社に口座があるかという情報もここに集まっています。
口座がどこにあるかわからない場合、ほふりに「登録済加入者情報開示請求」を行うことで、証券会社名を教えてもらえます。
費用は1件6,050円(税込)。ただし法定相続情報一覧図のコピーを一緒に提出すると4,950円(税込)に割引されます。結果は郵送で届き、通常1ヶ月程度かかります。
手続きは郵送のみ(窓口対応なし)です。詳しくはほふりの公式サイトをご確認ください。
口座がわかったら——証券会社への手続きの流れ
証券会社がわかっている場合(またはほふりで判明した場合)は、その証券会社に直接連絡します。
戸籍(亡くなった方と自分の関係がわかるもの)を持って証券会社の窓口へ行くか、電話で連絡すると、必要書類一式を案内してもらえます。
手続きの全体的な流れはこうなります。
- 法定相続情報一覧図を作成する(法務局で取得)
- ほふりに照会する(口座先がわからない場合)
- 証券会社から手続き書類を取り寄せる
- 遺産分割協議書・印鑑証明書などを揃えて証券会社に送付する
- 解約または名義変更の手続きを完了させる
法定相続情報一覧図を最初に作っておくと、ほふりへの照会費用が割引になり、その後の手続きも早く進みます。先に作っておくのがおすすめです。
法定相続情報一覧図については「法定相続情報一覧図とは?——便利な場面と、そうでもない場面」で詳しく解説しています。
書類は複数部まとめて用意する
証券口座が複数ある場合、書類を1部しか用意しないと手続きが一本ずつになります。A証券に書類を送って戻ってくるのを待ち、次にB証券に送って……という流れになると、時間が何倍もかかります。
遺産分割協議書は複数部まとめて作成します。 証券口座と銀行口座の数を見越して、必要な部数を最初から用意するのが実務上のセオリーです。
法定相続情報一覧図は何部取っても費用はかかりません。 法務局に申請すれば複数枚発行してもらえますので、口座の数に合わせて取り寄せておくと安心です。
印鑑証明書も同じ通数必要になります。市区町村窓口で必要な枚数をまとめて取得してください。
遺産分割協議書の作り方については「遺産分割協議書の書き方——自分でもできる?司法書士が本音で解説」もあわせてご覧ください。
解約・換金の流れ——銀行口座と何が違うか
銀行口座の解約は比較的シンプルです。手続きが完了したら、指定の銀行口座にお金が振り込まれて終わりです。
証券口座はそうはいきません。ほとんどの証券会社では、相続した株式を直接現金で払い出すことができません。 手続きの流れはこうなります。
- 相続人名義の証券口座を同じ証券会社に開設する
- 亡くなった方の口座から相続人の口座へ株式を振り替える
- その後、株式を売却して現金化する(売却せずそのまま保有・運用も可)
株式をそのまま持ち続けるか、現金に換えるかは相続人の判断です。ただし、売却タイミングによって値段は変わります。それも踏まえて判断してください。
株式を「分ける」ときの注意点
現金は金額で等分できますが、株式はそう簡単にはいきません。
株式には単元株(通常100株で1単元)という単位があります。たとえば「150株を2人で半分ずつ」にしようとすると、75株ずつになりますが、1単元に満たない「端株」が生じて管理がかなり複雑になります。
また、株式を相続人の共有名義にすることは制度上できなくはありませんが、後々の売却や手続きに支障が出ることが多く、おすすめしません。
株式を複数人で分ける場合は、次のどちらかが現実的です。
- 一旦現金化してから分ける(売却後の現金を協議書通りに分配)
- 誰か一人の名義にまとめて、そこから他の相続人に現金で支払う(代償分割)
どちらの方法をとるにせよ、遺産分割協議書にその旨を明確に記載しておくことが重要です。「現金化して○○の口座に集め、○○が各自に支払う」という手順まで協議書に書いておかないと、後から「話が違う」というトラブルになることがあります。
手続きをまとめて司法書士に依頼する選択肢
証券口座の解約・売却・分配を進める場合、誰か一人の相続人が窓口になって書類を集め、口座を開設し、売却して、振り込んで……という作業をすべて担うことになりがちです。
他の相続人からすれば「やってもらっている」立場ですが、担当した相続人からすれば「なんで自分だけこんなに手間がかかるんだ」という気持ちになることもあります。相続財産の取り分は同じなのに、手間は全然違う——これはなかなか不公平です。
そういった場合は、司法書士にまとめて依頼するという選択肢があります。書類の収集から証券会社とのやり取り、現金化、分配まで司法書士が間に入って進めます。誰か一人に負担が偏らず、全員が同じ立場で手続きを終えられます。
また、現金化したお金を司法書士のお預かり金口座を経由して各相続人に分配することもできます。一旦誰かの口座にまとめるのが不安、という場合でも、中立な立場で公平に分配できます。
「証券口座の相続、どこから手をつければいいかわからない」という場合も、まずご相談ください。
まとめ
- 証券口座は書類が手元にないことが多い。ほふりへの照会で口座先を調べられる(6,050円、法定相続情報一覧図で4,950円に割引)
- 手続きの流れ:法定相続情報一覧図作成 → ほふり照会 → 証券会社へ書類送付 → 解約または名義変更
- 書類(遺産分割協議書・法定相続情報一覧図・印鑑証明書)は複数部まとめて用意して同時並行で進める
- 解約は相続人名義の証券口座を開設してから株式を振り替え、その後売却して現金化
- 株式の分割は端株の問題があるため、現金化か代償分割が現実的
- 分け方の手順は遺産分割協議書に明記しておく
- 信頼関係が不安なら司法書士のお預かり金口座を経由した分配も可能
相続をおわりに。
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参考
【執筆者】
司法書士尾張由晃 司法書士法人せと事務所代表
愛知県司法書士会 登録番号:第1981号
蟹江町在住、実務歴10年以上。同じ地元民として、単なる事務作業ではない「生涯に寄り添うサポート」をお約束します。
最終更新:2026年5月27日
