実家を兄弟で共有名義にするとどうなる?相続の落とし穴
「相続をおわりに。」司法書士の尾張です。
「実家しかないし、とりあえず兄弟で半分ずつ入れておこうか」——蟹江町でも、こういうご相談を本当によくいただきます。
公平に見えますよね。揉めたくないし、きっちり半分こ。気持ちはよくわかります。
でも、そのたびに私、尾張は「それ、ちょっと待ってください」とお伝えしています。
共有名義にすること自体は、登記の手続きとしては簡単です。簡単だからこそ、軽く考えてしまう。問題は「入れた後にどうするか」です。今日は、その「後」で何が起きるかをお話しします。
目次
- 兄弟で「2分の1ずつ」がよくない理由
- 共有名義の不動産は「全員の同意」がないと動かせない
- 次の世代で問題が”爆発”する
- 「共有持分買取業者」という存在
- 共有になってしまった後、どう解消する?
- 結局、不動産の相続はどう決めればいい?
- まとめ
兄弟で「2分の1ずつ」がよくない理由
まず誤解のないように言うと、共有名義の登記自体は問題なくできます。「長男2分の1、次男2分の1」と登記簿に載せるだけです。技術的にはむしろ簡単な部類です。
だからこそ、落とし穴になります。
私、尾張のところに来るご相談で多いのが、
「とりあえず半分ずつで入れちゃったんやけど、どうしましょう」
という、入れた後のご相談です。入れるのは一瞬。でも、その共有状態を解消するのは、入れるときの何倍も手間とお金がかかります。
共有名義は「公平でやさしい解決」に見えて、実は「決断を将来に先送りしているだけ」のことが多いのです。
共有名義の不動産は「全員の同意」がないと動かせない
共有名義のいちばんの問題は、不動産が自由に使えなくなることです。
共有物に対して何ができるかは、行為の重さで分かれています。2021年の民法改正(2023年施行)で整理されました。
民法第251条第1項
「各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。…)を加えることができない。」
つまり、売る・建て替えるといった大きな行為は、共有者全員の同意が必要です。一人でも反対すれば前に進みません。
一方で、
民法第252条第1項(要約)
共有物の管理に関する事項は、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決める。
賃貸に出すなどの「管理」は持分の過半数で決められますが、それでも一人では決められないことに変わりはありません。
具体的にはこうなります。
- 実家を売りたい → 共有者全員の同意が必要。一人が「売らん」と言えば売れない
- 建て替えでローンの担保に入れたい → 共有者全員の同意が必要
- 賃貸に出したい → 持分の過半数の同意が必要
「名義の半分はもらったのに、自分の一存では何もできない」。これが共有名義の現実です。
次の世代で問題が”爆発”する
ここからが本当に怖いところです。
兄弟2人で共有していた実家。兄弟同士なら、まだ話し合いができます。仲が良ければ「お前が住んどっていいよ」で済むこともあります。
ところが、共有者の一人が亡くなると、その持分が亡くなった人の配偶者や子に移ります(数次相続)。
すると、こうなります。
兄の持分2分の1 → 兄の妻と、兄の子たちへ
いつのまにか、共有者が「弟 + 兄の妻 + 兄の子2人」の4人に
弟さんからすれば、話し合う相手が義理の姉や甥っ子に変わります。「実家をどうするか」を、関係の薄くなった親族と話さなければならない。これは想像以上にしんどいです。
共有名義は、放っておくと世代をまたぐたびに共有者がねずみ算式に増えていきます。これは登記放置で起きる数次相続の問題と、まったく同じ構図です。詳しくは数次相続とは——相続手続き中に相続人が亡くなったらどうなる?をご覧ください。
「共有持分買取業者」という存在
もうひとつ、知っておいてほしいリスクがあります。
実は、自分の持分だけなら、他の共有者の同意なしに売れます。
民法第206条
「所有者は、法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有する。」
共有持分も「自分の財産」なので、自由に処分できるのです。他の共有者は、それを止められません。
ここに目をつけているのが「共有持分買取業者」です。仕組みはこうです。
- 共有者の一人から、持分だけを相場よりかなり安く買い取る
(例:2,000万円の家の2分の1=額面1,000万円分を、100万円前後で買う、というような買い方をする業者もあります) - 業者が共有者の一人になる
- 残った共有者(実家に住んでいる人など)に対して、「持分を高く買い取れ。さもなければ共有物分割請求の訴訟を起こす」と迫る
実家に住んでいる側からすれば、見ず知らずの業者がいきなり共有者になり、出ていくか高く買い取るか迫られる——という事態になりかねません。
「お金に困った共有者が、軽い気持ちで自分の持分だけ売ってしまった」。それだけで、他の共有者が巻き込まれます。共有名義には、こういう火種が眠っています。
⚠️ すべての買取業者が問題を起こすわけではありません。ただ、こうした取引が現実に存在する、ということは知っておいてください。
共有になってしまった後、どう解消する?
すでに共有になってしまった場合でも、解消する方法はあります。各共有者は、いつでも分割を求められます。
民法第256条第1項
「各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができる。…」
解消の主な方法は次のとおりです。
- 持分の買い取り:一人が他の共有者の持分を買い取り、単独名義にする
- 交換:土地が複数あるとき、お互いの持分を交換して、それぞれ単独名義にする
- 売却して分ける:売って、代金を持分に応じて分ける
- 共有物分割請求(裁判):話し合いがまとまらないとき、最終的に裁判所に分割を求める
私、尾張が以前関わったケースで、2つの土地を兄弟で2分の1ずつ共有にしてしまったご家庭がありました。最終的には弁護士と一緒に、お互いの持分を交換する登記をして、A土地は兄、B土地は弟という単独名義に整理しました。
ただ、振り返れば——最初からA土地は兄、B土地は弟と分けて登記しておけば、司法書士費用だけで済んだ話でした。共有にしてしまったために、解消で余計な手間と費用がかかってしまったわけです。
解消後の登記申請先は、蟹江町なら名古屋法務局 津島支局です。
結局、不動産の相続はどう決めればいい?
私がいつもお伝えしている原則は、シンプルです。
- 不動産は、できるだけ一人の名義にまとめる
- 土地が複数あるなら、この土地は誰、あの土地は誰と分けて単独名義にする
- どうしても共有にするなら、夫婦の間くらいにとどめる(次の代で複雑になりにくい)
- 一人にまとめると不公平になる場合は、代償金(もらいすぎた人が他の相続人にお金を払う)で調整する
「公平に半分ずつ」よりも、「誰か一人にまとめて、差額はお金で清算」のほうが、結果的にずっと揉めません。
不動産をどう分けるか、誰の名義にするかは、ご家庭の事情によって正解が変わります。実家の名義は誰にすべきかもあわせて読んでいただくと、考えやすいと思います。
なお、共有持分の相続税評価や、解消したときの税金は、税理士の領域です。必要に応じて提携税理士をご紹介します。
まとめ
- 共有名義の登記は簡単。でも入れた後の解消が大変
- 売却・建て替えは共有者全員の同意が必要(民法251条)、賃貸も過半数の同意が要る(252条)
- 共有者が亡くなると持分が配偶者・子へ移り、次の代で共有者が増えて爆発する(数次相続と同じ構図)
- 自分の持分だけは同意なしで売れる(民法206条)。共有持分買取業者のリスクに注意
- 解消は買い取り・交換・売却・共有物分割請求(民法256条)など。手間と費用がかかる
- 原則は一人の名義にまとめ、不公平は代償金で調整。共有はできるだけ避ける
「もう共有で入れちゃったんだけど…」という方も、早めならまだ整理しやすいです。手遅れになる前にご相談ください。
相続をおわりに。
「うちの場合はどうなんだろう?」と思ったら、まずはお気軽にご相談ください。
📞 電話:0120-542-184(平日9:00〜18:00)
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蟹江町で相続のことなら、蟹江町在住司法書士の私、尾張がすぐに対応いたします。
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参考
【執筆者】
司法書士尾張由晃 司法書士法人せと事務所代表
愛知県司法書士会 登録番号:第1981号
蟹江町在住、実務歴10年以上。同じ地元民として、単なる事務作業ではない「生涯に寄り添うサポート」をお約束します。
最終更新:2026年6月2日
