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2026.05.06 その他

法定相続情報一覧図とは?——便利な場面と、そうでもない場面

法定相続情報一覧図とは?——便利な場面と、そうでもない場面

法定相続情報一覧図とは?——便利な場面と、そうでもない場面

「いろんなところで手続きするのに戸籍が必要なんだけど、何通も取らないといけないの?」

「相続をおわりに。」司法書士の尾張です。

相続手続きをスムーズに進めるうえで、知っておいて損はない制度があります。
「法定相続情報一覧図」——被相続人の戸籍を一式法務局に提出すると、相続人が誰かを示した1枚の図を発行してくれます。以後、戸籍の束ではなく、その1枚で各種手続きが進められるようになります。

「全員が使うべき」とまでは言いません。便利かどうかは状況次第です。

ひとつ確認しておきたいのが、一覧図を正しく作るには「誰が相続人か」を把握していることが前提だということです。子の相続・親の相続・兄弟姉妹の相続・代襲相続・数次相続——権利関係のパターンによって、必要書類も一覧図の構成もまったく違います。わかっていれば作れます。でも、わからないから相談に来る——これが実際のところです。

制度の中身と使いどころ・向かない場面・自分で作る場合のリアルをまとめます。


目次

  1. 法定相続情報一覧図とは——戸籍の束を1枚に置き換える制度
  2. どこで便利か——「同時並行」がキーワード
  3. 単独で取ると逆に時間がかかる
  4. 自分で作ってもいい——ただ「気力」は要る
  5. 一覧図では表現できないケース——3パターン
  6. 申請の流れ・必要書類
  7. 蟹江町からの申請——津島支局で完結
  8. 戸籍の広域交付との関係——役割が違う
  9. まとめ

法定相続情報一覧図とは——戸籍の束を1枚に置き換える制度

法定相続情報証明制度は、平成29年(2017年)5月29日にスタートした比較的新しい制度です。

仕組みはシンプルです。

  1. 被相続人の戸籍を一式集める(出生から死亡まで)
  2. 相続人全員の戸籍も集める
  3. 相続関係を1枚の図にまとめる(これが「法定相続情報一覧図」)
  4. これを法務局に提出する
  5. 法務局が審査して、認証文付きの「写し」を発行してくれる

シンプルな流れに見えますが、そもそも1番目の「戸籍を集める」段階から、誰が相続人になるかを把握していないと、何の書類を集めればいいかが決まりません。子の相続か・親の相続か・代襲が絡むか——権利関係のパターンによって、集める戸籍の範囲も図の構成もまったく変わります。そこを押さえられていれば、以降の手続きが格段にラクになります。

以後、銀行・税務署・年金事務所・法務局(相続登記)・運輸支局(自動車)などで、戸籍の束を出す代わりに、この「写し」1枚で済ませることができます。

ポイントは4つ。

  • 発行は無料(登録免許税も手数料もかかりません)
  • 何枚でも発行可能(必要な手続き先の数だけもらえます)
  • 5年間は法務局で保管(期間内なら追加発行も無料)
  • 全国の法務局で使える(一度発行すれば全国どこでも有効)

どこで便利か——「同時並行」がキーワード

一覧図が本領を発揮するのは、同時並行で複数の手続きを進めるときです。

例えば、こんなケース。

  • 銀行3行・証券会社1社・税務署・法務局(相続登記)——6箇所の手続きが必要
  • 戸籍の束を順番に回していたら、1箇所で2週間×6箇所=3ヶ月以上かかる
  • 戸籍一式を複数セット揃えようとすると、数千円〜1万円以上の費用がかかります(1通あたり450〜750円×何十通)。印鑑証明書は450円で何通でも取れますが、戸籍はそうはいきません

ここで法定相続情報一覧図が3〜4枚あれば、各手続きを並行で進められます。郵送中に紛失するリスクもありません。

私、尾張の事務所でも、不動産登記の申請と法定相続情報は一括で申請できるため、「ついでに作っちゃう」ことが多いです。「法定相続情報だけ先に申請して1〜2週間待つ」という手間が省けます。戸籍を揃える作業は登記でもどうせやるので、時短効果が一番大きいのがこのパターンです。


単独で取ると逆に時間がかかる

ここは勘違いされやすいポイントです。

一覧図さえあれば手続きが早く終わる」という発想は、半分正解で半分間違いです。

一覧図そのものが発行されるまでに、1〜2週間かかります。

  • 戸籍を全部揃えてから法務局に申請
  • 法務局が審査
  • 不備があれば補正
  • OKなら発行

戸籍を集める時間に加えて、これだけかかります。

つまり——

  • 銀行1行で口座を解約するだけ
  • 法務局で相続登記を1件するだけ

こういう「単発の手続きしかない」場合は、一覧図を作る時間で戸籍の束を持って手続きしに行った方が早いこともあります。

「同時並行で何箇所も回る」シチュエーションがない方にとっては、一覧図のメリットを活かしきれない、というのが現場の感覚です。


自分で作ってもいい——ただし「権利関係の判断」が最初の壁

「自分で作っちゃおうかな」と思う方もいらっしゃるかもしれません。
正確に言うと——「自分のケースの権利関係が判断できれば」作れます。

相続は、誰が相続人になるかによって、必要書類も一覧図の構成もまったく変わります。

  • 子の相続(配偶者+子)
  • 親の相続(子がいないため父母へ)
  • 兄弟姉妹の相続(子も親も先に亡くなっているため兄弟へ)
  • 代襲相続が絡む(相続人が先に亡くなっていて孫や甥姪が代わりに相続)
  • 数次相続(手続き中にさらに相続人が亡くなった)

これが全部ちがう話です。「自分はどのパターンか」を判断するところが、実は一番難しいところです。

わかっていれば作れます。でも、わからないから相談に来る——というのがほとんどのケースです。

権利関係の判断ができたとして、さらにこういう作業が伴います。

①自分の家系に合う形を自分で組む

法務省のサイトに雛形(PDF・Word)はあります。
ただ、用意された雛形ではカバーしきれないパターンが結構あります。
「先妻の子と後妻の子がいる」「養子が入っている」「代襲が1人混じる」など、自分の家系に合わせてエクセルやワードで図を組み直す必要が出てきます。

②必要書類を自分で判断して揃える

権利関係のパターンによって必要書類が違います。
「これで全部揃った」かどうかも自分で判断しなければなりません。
1通でも足りなければ法務局で差し戻されます。

③補正対応に、平日昼間に法務局へ行く

申請後に不備があれば「ここをこう直してください」と連絡が来ます。
書き方は教えてくれますが、直してはくれません。ワードやエクセルで一覧図を組み直して、また提出する作業が必要になります。

事前に相談したい場合も、申請後に補正が出た場合も、対応は平日昼間に津島支局まで出向くか、電話で補正内容を確認してから再提出する流れになります。


「楽したいなら専門家にお任せください」というくらいの選択肢です。権利関係の整理さえできれば、自分で作ることは十分可能です。


一覧図では表現できないケース——3パターン

すべての相続が一覧図で表現できるわけではありません。3つのパターンを押さえておきましょう。

①数次相続のケース——複数枚必要

法定相続情報一覧図は「ある被相続人について、誰が法定相続人か」を証明する書類です。
被相続人が複数いる場合(例:祖父が亡くなり、その相続が終わらないうちに父も亡くなった)、それぞれについて別々の一覧図が必要になります。

→ 数次相続そのものについては数次相続とは——相続手続き中に相続人が亡くなったらどうなる?で詳しく書きました。

②代襲相続のケース——1枚でOK

似た言葉ですが、代襲相続は別物です。
代襲相続は「被相続人は1人。ただ、その相続人がすでに亡くなっていて、孫が代わりに相続する」というパターン。被相続人は1人なので、1枚の一覧図に代襲相続人も書き込めます

「数次は複数・代襲は1枚」——ただし、そもそも自分のケースが数次か代襲かを判断するのが最初の難関です。その判断を誤ると、一覧図の枚数も、必要書類も、まるで変わってきます。「わかっていれば迷わない」のがまさにこの問題で、それが自分で作る場合の一番のハードルになります。

③相続放棄した相続人がいるケース——別途証明書が必要

ここがやや厄介です。

法定相続情報一覧図は戸籍をベースに作成されます。
ところが、相続放棄は戸籍に載りません。家庭裁判所で相続放棄が受理されても、戸籍上は依然として「相続人」のまま記録されます。

つまり:

  • 一覧図には「相続放棄した相続人」も記載されたまま
  • 銀行などに「この人は実は放棄したので、相続人は残りの○人です」と説明する必要がある
  • そのために「相続放棄申述受理証明書」を別途取得して、一覧図と一緒に出すことになります

これがそこそこ骨が折れます。
銀行の担当者が相続放棄に詳しくない場合、「なぜ一覧図にこの人の名前があるのか」という説明から始めることになります。

→ 相続放棄については相続放棄すべき?判断基準・3ヶ月の期限・手続きを解説をご覧ください。


申請の流れ・必要書類

申請の流れ

  1. 戸籍を集める(被相続人の出生から死亡まで・相続人全員の戸籍)
  2. 法定相続情報一覧図を作成
  3. 申出書を作成
  4. 法務局に提出
  5. 1〜2週間後、認証文付きの「写し」が交付される
  6. 必要枚数を無料で受け取る(追加発行も5年間は無料)

必要書類

書類 内容
被相続人の戸籍(出生〜死亡) 全部事項証明書
被相続人の住民票の除票 最後の住所を証明
相続人全員の戸籍 現在の戸籍。抄本でOK
申出人の身分証 運転免許証・マイナンバーカード等
法定相続情報一覧図 申出人が作成
申出書 法務省サイトのフォーム

戸籍を集める手順については相続に必要な戸籍の集め方——広域交付制度でどう変わった?を参考にしてください。

【重要】上記は「子の相続(配偶者+子)」という標準的なケースの目安です。 代襲相続・数次相続・兄弟姉妹相続では必要書類が大きく変わります。自分がどのパターンに当たるかを正しく判断できていないと、「揃えたつもりが足りなかった」という補正に繋がります。自分のケースの権利関係がはっきりしているなら自分で揃えられます。判断に迷うなら、事前に司法書士か法務局に確認することをおすすめします。

また、一覧図に住所を記載する場合は申出人の住所証明書(住民票等)の添付が別途必要ですが、住所を記載した一覧図は住所証明書を兼ねることもできます。

申請場所

以下のいずれかを管轄する法務局で申請できます。

  • 被相続人の本籍地
  • 被相続人の最後の住所地
  • 申出人の住所地
  • 被相続人名義の不動産の所在地

費用

無料です。 登録免許税も手数料もかかりません。


蟹江町からの申請——津島支局で完結

蟹江町からの申請の場合、上記4つのいずれかが蟹江町にあれば(被相続人の本籍地・最後の住所地・申出人の住所・被相続人の不動産所在地)、名古屋法務局津島支局で申請できます。

私の経験では、津島支局は結構早いです。1週間程度で発行されることが多く、ローカル特有のクセも特にありません。

基本は窓口申請です。郵送も可能ですが、補正があった場合は結局窓口に行くことになります
窓口申請であっても申請当日にチェックが完了するわけではなく、後日補正の連絡が来ることがあります。ただし郵送と比べると手戻りの往復が少なくて済むことが多いので、窓口申請をおすすめします。


戸籍の広域交付との関係——役割が違う

相続に必要な戸籍の集め方でも書きましたが、令和6年(2024年)3月1日から、戸籍の広域交付制度が始まりました。
これは「全国どこの市区町村役場でも、自分の直系血族の戸籍を一括で取れる」という制度です。

「これがあれば、もう一覧図は要らないんじゃないの?」と思う方もいらっしゃいます。

結論:役割が違うので、両方を組み合わせて使います。

  • 広域交付戸籍を集めるときに便利(ただし1通ごとに手数料はかかります)
  • 法定相続情報一覧図集めた戸籍を1枚に圧縮するときに便利

広域交付で戸籍を集めやすくなったとはいえ、各手続き先で戸籍束を提出する手間は変わりません。
銀行に行って戸籍束を見せ、コピーされ、待たされる——この時間を圧縮するのが一覧図の役割です。

広域交付では取れない戸籍がある

広域交付で取得できるのは直系親族(親・子・祖父母・孫など)の戸籍のみです。
兄弟姉妹が相続人になるケースでは、兄弟姉妹の戸籍は広域交付では取れません。

まず「兄弟姉妹相続になっている」と判断できていることが前提です。被相続人に子がなく、父母もすでに亡くなっている——この確認が権利関係の整理であり、一覧図を作る前の入口です。各兄弟姉妹が自分の戸籍を自分で取得して揃える必要があります。

権利関係の整理さえできていれば、法定相続情報一覧図は兄弟姉妹を含めて作成できます。以降はその1枚で各手続き先に対応できます。一覧図は戸籍を「集めるツール」ではなく「圧縮するツール」——そこが広域交付との役割の違いです。

住所を記載すると「住所証明書」も兼ねる

法定相続情報一覧図には、相続人の住所を記載することもできます。
住所を記載した一覧図は住民票などの住所証明書を兼ねることができ、一部の手続きで住民票の提出が不要になります(ただし受け付けるかどうかは手続き先による)。その場合、申請時に申出人の住所証明書(住民票等)の添付が別途必要になります。

「広域交付で楽になった戸籍集め」と「一覧図で楽になる手続き先での提出」——両方を活用するのが、令和の相続手続きの基本形です。


まとめ

  • 法定相続情報一覧図は、戸籍の束を1枚に置き換える制度(無料・何枚でも発行可・5年保管)
  • 本領を発揮するのは「同時並行で複数の手続きを進めるとき
  • 単発の手続きしかない人は、一覧図を作る時間でその手続きを終えた方が早いこともある
  • 自分で作ってもいい。ただし相続関係によって必要書類も一覧図の構成も大きく変わる
  • 数次相続のケースは被相続人ごとに複数枚必要
  • 代襲相続のケースは1枚でOK——ただし数次か代襲かの判断自体が難しい
  • 相続放棄者がいるケースは「相続放棄申述受理証明書」を別途用意
  • 住所を記載すれば住所証明書も兼ねられる(申請時に住民票が別途必要)
  • 蟹江町からは津島支局で申請可、1週間程度で発行、窓口申請が無難
  • 広域交付では直系親族の戸籍しか取れないが、一覧図は兄弟姉妹も含めて作成可能
  • 戸籍の広域交付と組み合わせると、令和の相続手続きの基本形になる

「自分の状況にハマる制度かどうかを見極めて使う」のが正解です。

そしてその「見極め」——自分の権利関係がどのパターンで、何の書類が必要で、どんな一覧図を作ればいいのか——がわかっていれば、一覧図は自分でも作れます。でも、そこがわからないから相談に来る。それが実際のほとんどのケースです。まず権利関係の整理を——それがすべての出発点です。


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【執筆者】
司法書士尾張由晃 司法書士法人せと事務所代表
愛知県司法書士会 登録番号:第1981号
蟹江町在住、実務歴10年以上。同じ地元民として、単なる事務作業では
ない「生涯に寄り添うサポート」をお約束します。

司法書士尾張由晃のプロフィール詳細はこちら


参考:公的機関の一次情報
法定相続情報証明制度について(法務省)
戸籍法の一部改正・広域交付(法務省)
不動産登記法(e-Gov法令検索)

最終更新日:2026年5月6日

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