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2026.04.19 その他

相続人に認知症の方がいる場合——遺産分割はどうなる?

相続人に認知症の方がいる場合——遺産分割はどうなる?

「母が亡くなったんですが、父が認知症で施設に入っています。遺産分割の協議書って、父にもサインしてもらわないといけませんか?」

蟹江町周辺でも、こういったご相談をいただくことがあります。

「相続をおわりに。」司法書士の尾張です。

結論から言うと、意思能力のない方が遺産分割協議書にサインしても、その協議は無効になります。
認知症の程度によっては、家庭裁判所に成年後見人の選任を申立てる必要が出てきます。

「それは面倒だからと、父が亡くなるまで放置しよう」——
そう考える方もいますが、その間にできないことがいくつかあります。

この記事では、相続人に認知症の方がいる場合の現実的な選択肢を整理します。


目次

  1. なぜ遺産分割できないのか
  2. 放置するとどうなるか
  3. 成年後見人の選任という選択肢
  4. 「成年後見は嫌だ」——よくある本音
  5. 実際の流れと費用の目安
  6. 意思能力は「程度の問題」
  7. まとめ

なぜ遺産分割できないのか

遺産分割協議は、相続人全員が有効な意思表示をすることで成立します。

認知症が進んでいる方は、「意思能力」——自分の行為の内容や結果を理解して判断する力——が失われている場合があります。
意思能力のない状態でサインした遺産分割協議書は、法律上無効です。

家族が代わりに押印することもできません。
本人に代わって法律行為を行える人——成年後見人——を立てる必要があります。


放置するとどうなるか

「認知症の家族が亡くなってから改めて手続きすればいい」と考える方もいます。
ただ、放置している間に困ることがあります。

不動産が売れない

実家や土地を売りたい場合でも、相続人全員の合意がなければ売却できません。
遺産分割が完了していない状態では、不動産の処分ができません。

空き家のまま固定資産税だけ払い続ける——という状況になりがちです。

相続登記が義務化されている

2024年4月から、相続登記が義務化されました。
相続を知った日から3年以内に登記しなければ、10万円以下の過料の対象になります。

遺産分割ができなくても「相続人申告登記」という簡易な方法で義務を履行することはできますが、
最終的な名義変更(遺産分割に基づく登記)は、協議が完了しないと進められません。

→ 相続登記義務化の詳細はこちらの記事をご覧ください。


成年後見人の選任という選択肢

意思能力がない相続人がいる場合、家庭裁判所に後見・保佐・補助のいずれかの開始を申立てることで、
選任された支援者が本人に代わって、または本人と一緒に遺産分割協議に参加できます。

なお、認知症の程度によって類型が異なります。

類型 対象 遺産分割協議への関わり方
後見 判断能力が常にない方 後見人が代わりに行う
保佐 判断能力が著しく不十分な方 保佐人の同意が必要
補助 判断能力が不十分な方 補助人の同意が必要(同意権が付与された場合)

この記事では、相談で最も多い「後見」を中心に説明します。

ただし、後見人は本人の利益を最優先に行動する義務があります。
他の相続人に有利な内容の協議には同意できません。
法定相続分を下回る内容での協議は、原則として認められません。


「成年後見は嫌だ」——よくある本音

「成年後見人を立てることに抵抗がある」という方は少なくありません。
実際によく聞く理由をまとめます。

① 一度選任したら、亡くなるまで続く

成年後見は、本人が亡くなるまで続く制度です。
「手続きが終わったら終わり」にはなりません。

② 家族が選ばれるとは限らない

親族が後見人の候補として申立てても、家庭裁判所が司法書士や弁護士などの専門家を選任することがあります。
特に財産が多い場合や、相続人間に複雑な事情がある場合はその傾向が強まります。

③ 専門家後見人には毎月報酬が発生する

専門家が後見人に選任された場合、毎月報酬が発生します。
財産の規模にもよりますが、月2〜3万円程度が目安です。
本人が亡くなるまで続きますので、長期になれば総額も相応の金額になります。

④ 財産を自由に使えなくなる

後見人がつくと、本人の財産の管理は後見人が担います。
「必要なときに親の口座からお金を出す」ということが、原則できなくなります。

親族が後見人になれた場合でも、家庭裁判所への定期報告が必要で、
支出の内容も説明できるようにしておく必要があります。

こうした制約が「嫌だ」と感じるのは自然なことです。
ただ、それでも遺産分割を進めるためには、現状では成年後見制度を使うしかないのが実情です。


実際の流れと費用の目安

申立てから後見人の就任まで、おおむね1ヶ月程度かかります。
親族が申立人となる場合、書類の準備も比較的シンプルです。

費用の目安

申立てにかかる主な費用は以下のとおりです。

項目 目安
収入印紙(申立費用) 800円
郵便切手(裁判所へ) 3,000〜4,000円程度
登記手数料 2,600円
鑑定費用(必要な場合) 5〜10万円程度
戸籍・住民票等の取得 数千円〜
当事務所報酬(申立書作成) 100,000円(税別)

申立てにかかる費用は、申立人(ご家族)の負担です。
後見が開始されてからの本人の財産からは支出できません。
この点はあらかじめご承知おきください。

親族が後見人になれる可能性

親族が後見人候補として申立てた場合、実務上は8割程度は親族が選任される印象です。
ただし、財産が多い場合や、相続人間の関係が複雑な場合は、
家庭裁判所が専門家を選任することがあります。

後見支援信託

親族が後見人に選任された場合でも、一定の財産については後見支援信託が設定されることがあります。
これは、まとまった財産を信託銀行等に預け、後見人が自由に動かせないようにする仕組みです。
「親族が後見人になれれば自由に使える」というわけではない点を、あらかじめ理解しておいてください。


意思能力は「程度の問題」

「認知症=意思能力がない」とは一概には言えません。

認知症の診断を受けていても、あるいは介護が必要な状態であっても、
日常的な会話ができて、財産の分け方について自分で判断できる場合は、遺産分割協議に参加できます。

実際のところ、ご家族が「本人は大丈夫だろうか」と心配していても、
実際に話してみると意思疎通に問題がないケースもあります。

ひとつの考え方として、行為の内容や性質によって、必要とされる意思能力の水準は変わります。

たとえば、遺産の分け方に全員が納得していて、かつ本人の利益に沿った内容であれば、
多少の認知機能の低下があっても有効と判断される場合があります。
一方で、複雑な権利関係が絡む場合や、本人にとって不利な内容を含む場合は、
より明確な意思能力が求められます。

「うちの親は認知症と言われているが、本当に後見が必要なのか」と感じている場合は、
一度ご相談ください。状況を確認したうえで、必要な対応を一緒に考えます。


まとめ

  • 意思能力のない相続人がいると、遺産分割協議は無効になる
  • 放置すると不動産が売れない・相続登記義務化への対応が進まない
  • 解決策は成年後見人の選任。後見人が本人に代わって協議に参加する
  • ただし後見人は本人の利益優先——法定相続分を下回る内容には同意できない
  • 「嫌だ」という気持ちはわかる。制度の制約は現実として受け止めておく必要がある
  • 認知症=意思能力ゼロではない。程度と内容によっては協議できる場合もある
  • 迷ったら、まず現状を確認してからご相談を

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相続をおわりに。

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【執筆者】
司法書士尾張由晃 司法書士法人せと事務所代表
愛知県司法書士会 登録番号:第1981号
蟹江町在住、実務歴10年以上。同じ地元民として、単なる事務作業では
ない「生涯に寄り添うサポート」をお約束します。

司法書士尾張由晃のプロフィール詳細はこちら


参考:公的機関の一次情報
法務省・成年後見制度
裁判所・後見・保佐・補助の申立て
法務省・相続登記の申請義務化

最終更新日:2026年4月27日

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