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おわりのひとくちメモ おわりのひとくちメモ
2026.04.19 その他

数次相続とは——「とっとと終わらせておけば家族の話だった」のに

数次相続とは——「とっとと終わらせておけば家族の話だった」のに

「父の相続手続きをお願いしたいんですが」

こういったご依頼でヒアリングを進めていくと、
「実は手続きをしないまま次男も亡くなっていて……」という話が出てくることがあります。

「相続をおわりに。」司法書士の尾張です。

これが数次相続です。
家族の間だけで終わっていたはずの話が、手続きを放置していた間に、
義理の家族や孫の世代まで巻き込む話になってしまいます。


目次

  1. 数次相続とは何か——「相続が複数回=数次相続」ではない
  2. すぐ手続きした場合と放置した場合——何が違うか
  3. さらにやっかいなケース——未成年・認知症が絡むと
  4. 登記の処理——中間省略できる場合とできない場合
  5. 費用と手間は「やらなかった分」だけ増える
  6. まとめ

数次相続とは何か——「相続が複数回=数次相続」ではない

まず誤解を解いておきます。

「相続が複数回発生した」=数次相続、ではありません。

たとえば、母が先に亡くなり、母の相続手続きをきちんと完了させた上で、その後父が亡くなった場合。
この2回の相続はそれぞれ独立していて、父の相続手続きに母の書類は原則不要です。

数次相続になるのは——

ある相続が発生し、その手続きが完了しないうちに、相続人が亡くなった場合です。

  • 父が亡くなる
  • 手続きをしないまま時間が経つ
  • その間に、相続人の一人(次男)が亡くなる

この状態が数次相続です。

※ 次男が父より先に亡くなっていた場合は「代襲相続」という別の制度になります。
ここでは父の死後・手続き完了前に次男が亡くなったケースを扱います。


すぐ手続きした場合と放置した場合——何が違うか

父・母・長男・次男の4人家族を例に考えます。

パターンA:父が亡くなったあと、すぐに手続きをした

相続人は母・長男・次男の3人です。
全員が揃って遺産分割協議をして、協議書を作って、署名押印する。
家族の間だけで完結します。

パターンB:手続きをしないまま、次男が亡くなった(数次相続)

手続きをしないまま時間が過ぎ、次男が亡くなりました。
父の相続手続きに関わる人は——

  • (父の配偶者・相続人)
  • 長男(父の子・相続人)
  • 次男の配偶者(次男の相続人として、次男の権利を引き継ぐ)
  • 次男の子(孫)(同じく次男の相続人)

三世代・四者全員の合意がないと、手続きが進められません。

次男とは兄弟として話し合いができます。
でも次男の配偶者(義理の妹)と、父の遺産の話し合いをしなければならない——
これは、なかなかしんどい場面です。
血縁のない相手と、不動産や預貯金の分け方を話し合う必要が出てきます。

必要な書類も増えます。
父・次男それぞれの出生から死亡までの戸籍に加え、
次男の配偶者・次男の子の戸籍まで必要になります。


さらにやっかいなケース——未成年・認知症が絡むと

登場人物が増えるだけでも大変ですが、さらに問題が重なることがあります。

次男の子が未成年だった場合

未成年者は単独で遺産分割協議に参加できません。
通常は親権者(次男の配偶者)が子の代理人として参加しますが——

次男の配偶者自身も同じ協議の当事者です。
親と子が同じ相続の利害関係者になると「利益相反」になるため、
家庭裁判所に特別代理人を選任してもらう必要があります。
手続きがさらに一段階増えます。

母が高齢で認知症になっていた場合

母も相続人の一人ですが、認知症で意思能力がなければ協議に参加できません。
この場合は成年後見人の選任が必要になります。

→ 詳しくは相続人に認知症の方がいる場合の記事をご覧ください。

とっとと手続きをしておけば、母・長男・次男の3人で終わっていた話が——
放置したがゆえに、義理の家族・孫・特別代理人・成年後見人まで巻き込む話になります。
えらいこっちゃです。


登記の処理——中間省略できる場合とできない場合

数次相続の登記処理は、状況によって変わります。

中間省略ができる場合(中間の相続人が単独のとき)

途中で亡くなった相続人が「単独相続」になっていた場合、
中間の登記を省略して、現在の相続人へ直接名義変更できます。

たとえば父→母(単独相続)→子という流れなら、
「年月日・父相続、年月日・母相続」と一括で申請できます
(昭和30年12月16日民甲第2670号先例)。

中間省略ができない場合(最終的な相続人が単独になるとき)

父が死亡し、母と一人息子が共同相続人になったが、登記しないまま母が亡くなった場合。
最終的に息子一人に帰着しますが、父から息子への直接登記はできません。

かつては「一人遺産分割協議書」という方法が使われましたが、
東京高等裁判所平成26年9月30日判決・平成28年3月2日法務省民二第154号先例により、
この方法は認められなくなりました。

そのため原則として——

  1. 父の死亡による「母・息子」への共同相続登記
  2. 母の死亡による「息子」への持分移転登記

——という二段階の手続きが必要です。

例外: 母の生前に遺産分割協議が成立していた場合(書面で証明できる場合)は、父→息子への直接登記が可能です。ただし実務上、それを客観的に証明するのは難しく、原則は二段階と考えてください。


費用と手間は「やらなかった分」だけ増える

関わる人が増えた分・手続きが増えた分だけ、費用も手間も増えます。

最初の相続のときにすぐ動いていれば1回で済んだ手続きが、
数次相続になることで2回・3回と積み重なります。
戸籍の収集も、遡る世代が増えるほど通数が増えます。
連絡を取るべき相手も増え、協力を得るまでの時間も読めません。

実際に、音信不通の相続人がいるために何年も手続きが進まず、
固まってしまっている案件があります。

「あのとき動いておけば、家族だけで、半分以下の費用で終わっていた」——
そう感じる案件は、少なくありません。

相続登記の費用の詳細はこちらの記事をご覧ください。


まとめ

  • 相続が複数回発生しても、手続きが完了していれば数次相続にはならない
  • 数次相続になるのは「手続き完了前に相続人が亡くなった場合」
  • すぐ手続きすれば家族3人で終わる話が、放置すると三世代・四者以上の合意が必要になる
  • 次男の配偶者・孫まで巻き込む。未成年なら特別代理人、認知症なら成年後見——手続きが雪だるま式に増える
  • 費用・手間・時間は放置した分だけ増える。早く動くほどシンプルで安く済む
  • 「相続が発生したら、とっとと解決しておく」——これに尽きます

相続登記の義務化(2024年4月〜)により、放置したままでは過料の対象にもなります。
「そのうちやろう」と思っている案件があれば、一度ご相談ください。


関連記事:
相続登記が義務化!期限・罰則・蟹江町での手続きを解説
相続登記に必要な書類一覧
相続登記の費用はいくら?
相続に必要な戸籍の集め方
相続人に認知症の方がいる場合
法定相続情報一覧図とは?——便利な場面と、そうでもない場面(数次相続では複数枚必要になります)


相続をおわりに。

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【執筆者】
司法書士尾張由晃 司法書士法人せと事務所代表
愛知県司法書士会 登録番号:第1981号
蟹江町在住、実務歴10年以上。同じ地元民として、単なる事務作業では
ない「生涯に寄り添うサポート」をお約束します。

司法書士尾張由晃のプロフィール詳細はこちら


参考:公的機関の一次情報
法務省・不動産を相続した方へ
法務局・不動産の所有者が亡くなった

最終更新日:2026年4月27日

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