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2026.06.17 6.相続登記

未登記建物を相続したら?——費用と現実的な落とし所

未登記建物を相続したら?——費用と現実的な落とし所

未登記建物を相続したら?——費用と現実的な落とし所

「固定資産税の納税通知書は毎年届いているのに、法務局で調べたら、その建物の登記がなかった」——蟹江町では、こういうケースが珍しくありません。

「相続をおわりに。」司法書士の尾張です。

「税金を払っているんだから、当然ちゃんと登記されているはず」と思っている方が多いのですが、実は固定資産税と登記は、まったく別の管理です。今回は、登記のない建物(未登記建物)を相続したとき、私、尾張のところでよくお話しする「正式な手続き」と「現実的な落とし所」を、費用も含めて整理します。

この記事でわかること

  • 税金は払ってるのに登記がない建物ってあるの?
  • なんで登記されていない建物があるの?
  • 表題登記の申請義務と罰則はどうなってる?
  • 未登記建物を相続したときの正式な手続きと費用は?
  • 未登記や増築だと登録免許税はどうなる?
  • 未登記のままでいい?現実的な落とし所は?

固定資産税は払っているのに、登記がない建物ってあるの?

あります。しかも蟹江町には、わりとよくあります。ポイントは、建物の情報を管理しているのが「2つの別々の役所」だということです。

  • 法務局(登記)…登記は「この不動産は自分のものだ」と他人(第三者)に主張するための制度です。だから、所有者が「表題登記」を自分で申請しないと始まりません。所在・床面積・構造といった情報は、申請がない限り登記簿に載らない。黙っていれば、法務局は動かないのです。
  • 蟹江町役場(固定資産税)…固定資産税は、自治体が税金をかける根拠を自分で確認するための制度。だから税務課 固定資産税係が毎年現地を調べて、建っている建物に課税します。誰も申請しなくても、役場が勝手にやってくれるわけです。

つまり、建物が建っている=登記がある、ではないのです。役場は現地を見て勝手に課税してくれますが、法務局は申請しない限り動きません。だから「固定資産税は払っているのに、登記簿には建物が載っていない」という状態が生まれます。

なんで登記されていない建物が存在するの?

理由はシンプルで、昔は表題登記をする“きっかけ”がなかった家があるからです。

  • ローンで建てた家…銀行はお金を貸す代わりに、その建物を担保に取ります。担保にするには登記が必要なので、お金を借りて建てた建物は、ほぼ必ず登記されています。今どきの新築はこのパターンがほとんど。
  • 自己資金で建てた昔の家…銀行から借りておらず、売る予定もない。自分の家として使うだけ。この場合、わざわざ表題登記をする実益が薄かったのです。

蟹江町では特に、農家の離れ・物置・古い納屋・便所などにこのパターンが多い。地元の方からは、よくこんな声をいただきます。

「銀行から借りとらんし、売るわけでもないのに、わざわざ手続きせんでもええがね」

正直に言うと、登記して何かいいことがあるかと聞かれると、売却や融資の予定がないなら、メリットは薄い——というのが本音です。

表題登記、やらなくていい?罰則は?

「これ、やらなくていいの?」とよく聞かれます。でも実は、表題登記にも義務の規定があります。

不動産登記法第47条第1項
「新築した建物又は区分建物以外の表題登記がない建物の所有権を取得した者は、その所有権の取得の日から一月以内に、表題登記を申請しなければならない。」

つまり、建物を新築(または取得)したら、1か月以内に表題登記をする義務があります。義務は新築だけではありません。増築や一部取り壊しで床面積が変わったとき(不動産登記法第51条)や、建物を取り壊して滅失したとき(同第57条)も、それぞれ1か月以内に登記する義務があります。そして、これらを怠ると——

不動産登記法第164条
「(略)申請をすべき義務がある者がその申請を怠ったときは、十万円以下の過料に処する。」

10万円以下の過料という罰則も、一応あります。

ただし、ここは正直にお伝えします。実務上、未登記の建物にこの過料が科された、という話を私、尾張はほとんど聞いたことがありません。 制度としては存在しますが、現実に適用される場面は限られているのが実情です。

なお、これは2024年4月に始まった相続登記の義務化とは別の話です。相続登記は「登記されている不動産の名義変更」の義務、表題登記は「そもそも建物を登記する」義務。混同しやすいので、ここは分けて考えてください。

未登記建物を相続したとき、正式な手続きの流れは?

では、登記のない建物を相続して、法律どおりきっちり登記するなら、どうなるか。手続きは2段階で、担当する専門家も分かれます。

手順 内容 担当
① 表題登記 どこに・どんな建物が建っているか(所在・床面積・構造)を登記簿に載せる 土地家屋調査士
② 所有権保存登記 その建物の所有者(相続人)の名義を初めて登記する 司法書士

ざっくり言うと、土地家屋調査士=建物の“物理的な姿”を登記する人、司法書士=“誰のものか”という権利を登記する人、という役割分担です。未登記建物の場合、まず調査士が建物そのものを登記し、そのうえで司法書士が相続人の名義で所有権を入れる、という流れになります。

費用の目安は、
– 土地家屋調査士の表題登記:10万円前後
– 所有権保存登記の登録免許税(評価額の0.4%)+司法書士報酬

を合わせて、おおむね15万円前後になることが多いです(建物の規模や状況で変わります。詳しくは相続登記の費用もご覧ください)。※金額は目安で、保証するものではありません。

登記が現実とズレていると、登録免許税が読みにくい

正式に登記する場合の費用には、もうひとつ“落とし穴”があります。未登記、増築、一部取り壊し——表題登記の変更がきちんとされていない建物は、相続登記の登録免許税の計算が、ややこしくなることがあるのです。

通常、登録免許税は「固定資産税評価額 × 0.4%」で計算します。ズレているときは、ざっくりこう処理します。

  • 評価額が出ている(未登記でも役場が課税している、増築で評価が大きめに出ている、など)→ その評価額で計算。多めに払う形なので、登記と多少違っても問題になりません
  • 登記の床面積のほうが評価より大きい → 評価額から1㎡あたりの単価を出し、大きい方(登記)の床面積を掛けて計算
  • 建物や付属建物に、そもそも評価額が無い名古屋法務局の「新築建物課税標準価格認定基準表」(令和6年度・木造の居宅は1㎡あたり10万5,000円)で計算

共通するのは、基本は「大きい方・高い方」で計算するという考え方です。税額を下げるには、その根拠が必要になります。

——ね、ややこしいでしょう? 正直、ここは私たち司法書士でも、毎回その建物ごとに法務局と相談しながら、慎重に進めるところです。

やっかいなのは、最後の「評価額が無い」パターン。私、尾張が名古屋法務局 津島支局(蟹江町の管轄)で実際に経験した2件を紹介します。

実例①:築年が分からず「新築扱い」で約2万円増

評価額が無い建物を基準表で計算しようとしたところ、登記簿からは築年(いつ建ったか)が確認できませんでした。築年が分からないと減価ができないため、満額の「新築価格」で計算するしかなく、登録免許税が約2万円増えてしまいました。

一方、正式に土地家屋調査士へ依頼して登記をやり直すと約10万円。依頼者の方とご相談のうえ、「実家でもう数十年、今後売ることもない」ということで、約2万円増の方を選んで申請したケースです。

実例②:築80〜90年の付属建物(担当者の裁量で非課税に)

こちらも津島支局の件。母屋に付属する築80〜90年の物置・便所が未登記かつ評価証明書に不記載で、同じように新築基準で計算すると約4万5,000円増える計算でした。

ところが、法務局の担当者の方から、「これは本当はもう壊れている(滅失している)のではないですか?」と電話があり、事情をお伝えしたところ——

築80年ほどで、評価証明にも出てこない。壊れている可能性が高いものに税金をかけるわけにはいかない——現地を調査し、関係者に確認したうえで「滅失」と認め、非課税で処理

していただけた、というケースもありました。

このように、評価額が出ない・ズレている建物の登記は、単純に「評価額×税率」では済みません。基本は高い方で計算し、下げるには根拠が要る。築年数や現地の状況、担当者の裁量にも左右されます。だからこそ、法務局とやり取りしながら進める専門家の出番でもあるのです。

未登記のまま放置していい?

ここで多くの方が、「ものによっては15万円以上かけてまで、登記しないといけないの?」と立ち止まります。

判断の軸はシンプルです。

  • 売却や融資(担保設定)の予定がある → 正式に表題登記・保存登記まできっちりやるべき。登記がないと売れない・借りられないからです。
  • 今後も使うだけ。売るとしても建物は壊して“土地として”売る → 現実には、未登記のままにしておく方が多い、というのが実情です。

正直に言えば、使う予定のない建物に十数万円かけて登記するのは、メリットの割に負担が大きい。蟹江町もそこは分かっていて、「登記まではできなくても、せめて所有者の届出だけはしてください」という現実的な運用になっています(次の章で説明します)。

現実的な落とし所——蟹江町役場への「未登記家屋所有者変更届」

「正式に登記まではしない。でも、放っておくのも気持ち悪い」——そんなときの現実的な落とし所が、役場への届出です。

ただ、その前に必ず押さえてほしいことがあります。未登記の建物も、相続するなら遺産分割協議書にきちんと書いてください。 未登記だからと書き漏らすと、役場への所有者変更届も、将来の表題登記・相続登記も進められません。後から「あの建物が抜けていた」と気づくと、もう一度、遺産分割協議書を作り直し、相続人全員から実印をもらい直すことになります。さらにその間に相続人の誰かが亡くなって数次相続になると、ハンコをいただく相手が一気に増えて、手続きが何倍も大変になります。だからこそ、最初の遺産分割の段階で、未登記の建物まで漏れなく書いておくことが肝心です。

さて、届出の話に戻ります。遺産分割協議で「この未登記の建物は誰が継ぐ」と決まっても、蟹江町の税務課には、誰のものになったのか分かりません。役場にとって大事なのは「固定資産税を誰に請求するか」。そこで、

蟹江町役場 税務課 固定資産税係に「未登記家屋所有者変更届」を提出します。

蟹江町の公式案内(土地及び建物の相続について)によると、必要なものは——

  • 未登記家屋所有者変更届(蟹江町の様式・PDF)
  • 実印(印鑑登録されている印鑑)
  • 印鑑証明書の写し
  • 所有権の移転を証する書類(相続の場合は、戸籍謄本など相続関係を証する書類・遺産分割協議書 等)

※必要書類は変わることがあるので、提出前に税務課 固定資産税係(0567-95-1111/内線185・186・188)にご確認ください。

ひとつ大事な注意です。この届出は「税金の請求先」を変えるだけで、法的な所有権の移転ではありません。 あくまで「税務上の管理者」を変える手続きであって、「法律上の所有者」を確定させるには、本来は表題登記・相続登記が必要です。売却や融資のときには結局この登記が必要になるので、そこは頭の隅に置いておいてください。

まとめ

  • 固定資産税と登記は別管理。税金を払っていても、登記がない建物(未登記建物)はある。蟹江町では農家の離れ・物置などに多い
  • 表題登記には1か月以内の申請義務(新築は47条、増築・一部取り壊しは51条、滅失は57条)と10万円以下の過料(同164条)があるが、実務上の適用例はほとんど聞かない
  • 正式に登記するなら土地家屋調査士(表題登記)→司法書士(保存登記)で、費用は15万円前後が目安
  • 売却・融資の予定がないなら、未登記のままにする人が多いのが実情。ただし築年が分からないと減価できず、登録免許税が割高になることも
  • 未登記でも、相続するなら遺産分割協議書に必ず記載する。書き漏らすと届出も登記もできず、協議書の作り直し・実印のもらい直しに(数次相続が起きると特に大変)
  • 現実的な落とし所は、蟹江町役場への未登記家屋所有者変更届。ただし「税金の請求先変更」であって、所有権の移転ではない

未登記の建物がある、増築した、物置を壊した——こういう「登記と現実がズレている」ケースは、放っておくと相続のときに手間取ります。ご相談いただければ、法務局や役場とやり取りしながら、手間なく・ムダな費用をかけずに進められます。まずは私、尾張にお声がけください。


相続をおわりに。

「うちの場合はどうなんだろう?」と思ったら、まずはお気軽にご相談ください。

📞 電話:0120-542-184(平日9:00〜18:00)
📱 LINE:こちら(24時間受付・相談無料)
📧 メール:owari@shihouseto.com

蟹江町で相続のことなら、蟹江町在住司法書士の私、尾張がすぐに対応いたします。


【執筆者】
司法書士尾張由晃 司法書士法人せと事務所代表
愛知県司法書士会 登録番号:第1981号
蟹江町在住、実務歴10年以上。同じ地元民として、単なる事務作業では
ない「生涯に寄り添うサポート」をお約束します。

参考リンク

最終更新日:2026年6月17日

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