「権利証が見つからない」——相続登記に権利証はいる?いらない?
「お父さんの権利証が見つからないんですが、相続登記できますか?」
ご相談でよく聞かれます。
「相続をおわりに。」司法書士の尾張です。
結論から言います。相続登記に、亡くなった方の権利証は基本的に不要です。
ただし、「基本的に」という言葉が重要です。状況によっては権利証が大きな助けになるケースがあります。この記事では、その仕組みを整理します。
目次
- なぜ権利証が不要なのか
- 相続後は新しい権利証が発行される
- 「住所がつながらない」問題が起きることがある
- 住民票の保管期限の問題
- 権利証があれば解決できる
- 権利証もない場合——法務局ごとに運用が異なる難しさ
- まとめ
なぜ権利証が不要なのか
権利証(登記済証・登記識別情報)は、生きている方が「自分がこの不動産の所有者である」ことを証明するための書類です。
亡くなった時点で、その方の権利証はすでに効力を失います。相続が発生した瞬間、不動産の名義は「誰のものか未確定な状態」になります。これから新たに相続人の名義を入れる手続きが相続登記ですから、亡くなった方の権利証を出す場面がそもそもありません。
SNSで「権利証がなくて土地が売れなかった」という投稿が話題になることがありますが、相続登記の場面では当てはまりません。売却時の話と混同されているケースがほとんどです。
相続後は新しい権利証が発行される
相続登記が完了すると、相続人名義の新しい権利証(登記識別情報通知)が発行されます。
亡くなった方の権利証がなくても、手続きが完了すれば相続人の権利証が手元に届きます。「権利証を引き継がなければいけない」という感覚をお持ちの方がいますが、そういう仕組みではありません。
「住所がつながらない」問題が起きることがある
権利証が不要と言いましたが、一つ厄介なケースがあります。
登記簿には、その不動産を取得したときの住所と氏名が記録されています。相続登記をする際、「登記簿上の住所・氏名」と「亡くなった方の住所・氏名」が一致しているかどうかを確認する必要があります。これが「同一人であること」の確認です。
問題が起きるのは、引越し後に住所変更の登記をしないまま亡くなった場合です。
たとえば、弥富市に住んでいた頃に不動産を購入し、その後蟹江町に引っ越して、住所変更登記をしないまま蟹江町で亡くなった——このケースでは、登記簿には「弥富市○○」という住所が残ったままです。
亡くなった時点の住民票の住所は「蟹江町○○」。登記簿と住民票の住所が一致しません。本当に同一人物なのか、証明が必要になります。
住民票の保管期限の問題
住所の変遷を証明するには、引越し前の住所が記載された住民票の除票を取得するのが一般的な方法です。
ところが、以前は住民票の除票の保管期限が5年と定められていました。5年を過ぎると廃棄されてしまうため、古い住所を証明しようとしても「記録がありません」と言われるケースが多発していました。
この問題を受けて、令和元年(2019年)6月20日の法改正により、保管期限が5年から150年に延長されました。
ただし、この改正は平成26年(2014年)6月20日以降に消除された住民票・戸籍の附票が対象です。それ以前に消除されたものには5年の保管期限が適用されており、今でも「古い住民票が取れない」という状況は残っています。
何十年も前に引越しをされていた方では、この問題が生じやすいです。
権利証があれば解決できる
住所がつながらない場合でも、権利証(登記済証)があれば解決できます。
平成29年3月23日付 法務省民二第175号通達により、被相続人の同一性を証明する書類として権利証(登記済証)を添付することが認められています。
権利証には、その不動産を取得した際の住所・氏名が記載されています。「この権利証を持っているということは、当時この住所に住んでいた本人である」と判断できるわけです。住民票で住所が証明できなくても、権利証で同一性を証明できます。
「権利証は相続には関係ない」と言いましたが、住所がつながらないケースでは「あれば非常に助かる書類」になります。見つかりそうなら、ぜひ探してみてください。
権利証もない場合——法務局ごとに運用が異なる難しさ
権利証もなく、住民票でも住所がつながらない場合はどうなるか。
法務局に相談することになりますが、固定資産税の納税通知書・納税証明書、不在籍不在住証明書など、住所の関連を示す書類をできる限り集めて、上申書とともに申請するという方法が取られます。
ただし、ここが難しいところです。
上申書の運用は、法務局によって異なります。 求められる書類の種類・組み合わせ・記載内容が、管轄の法務局によって変わることがあります。「A法務局では通ったが、B法務局では追加書類を求められた」ということが実務ではあります。
蟹江町の不動産であれば管轄は名古屋法務局津島支局になりますが、どの書類をどう組み合わせれば通るかは、事前に確認・交渉が必要なケースもあります。「できないことはない」ですが、権利証がある場合と比べると、時間・手間・費用が増えることは覚悟しておく必要があります。
まとめ
- 相続登記に亡くなった方の権利証は基本的に不要
- 相続登記完了後、相続人名義の新しい権利証が発行される
- 引越し後に住所変更登記をしていなかった場合、住所がつながらない問題が起きることがある
- 住民票の除票は令和元年改正で150年保管になったが、平成26年以前に消除されたものは5年のまま
- 権利証があれば、平成29年3月23日付民二第175号通達に基づき住所がつながらなくても同一性を証明できる
- 権利証もない場合は上申書等で対応するが、法務局によって運用が異なり手間と費用がかかる
権利証は「相続登記には不要」が原則ですが、「あれば住所問題を解決できる書類」でもあります。見つからなくても手続きを止める必要はありませんが、権利証の有無で手続きの手間が変わる場合があることは知っておいてください。
相続をおわりに。
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【執筆者】
司法書士尾張由晃 司法書士法人せと事務所代表
愛知県司法書士会 登録番号:第1981号
蟹江町在住、実務歴10年以上。同じ地元民として、単なる事務作業ではない「生涯に寄り添うサポート」をお約束します。
最終更新:2026年5月20日
