「親が亡くなってから何十年も、実家の登記が親の名義のままで……」
蟹江町でも、こういったご相談をよくいただきます。
「相続をおわりに。」司法書士の尾張です。
令和6年(2024年)4月1日から、相続登記が義務化されました。
これまでは「やっておいた方がいいが、急ぐ必要はない」という扱いでした。
場合によっては私、尾張の方から「今すぐしなくても大丈夫ですよ」とお伝えすることもありました。
それが法律上の義務になりました。違反すると10万円以下の過料が科される可能性があります。
「最近親が亡くなった」という方はもちろん、
「何十年も前の相続登記を放置している」という方にも、期限が迫っています。
この記事では、義務化のルール・期限・罰則・「相続人申告登記」という新しい制度まで解説します。
目次
- まず確認——あなたの家は大丈夫?
- なぜ義務化されたのか——所有者不明土地24%の現実
- 義務化のルール——誰が、いつまでに、何をする?
- 罰則——10万円以下のお金が取られる?
- 「正当な理由」があれば免れるか
- 相続人申告登記——どうしても間に合わない場合の逃げ道
- よくある思い込み——「うちは大丈夫」が一番危ない
- 登記が進まない2つのパターン——そして今、義務化がやってきた
- 手続きの流れと費用
- まとめ——登記を済ませた先の未来
まず確認——あなたの家は大丈夫?
- [ ] 親や祖父母名義のままの不動産がある
- [ ] 登記がいつ最後に動いたか覚えていない
- [ ] 「固定資産税を払っているから大丈夫」と思っている
1つでも当てはまったら、この記事を最後まで読んでください。
代を重ねるほど相続人は増え、手続きはどんどん重くなります。
令和9年3月末という期限も、じわじわ迫っています。
なぜ義務化されたのか——所有者不明土地24%の現実
不動産の名義が、何十年も亡くなった方のままになっている——
これを「所有者不明土地」と呼びます。
国土交通省の調査(令和2年)によれば、日本全国の土地の約24%が所有者不明土地です。
面積にして約410万ヘクタール——九州本島の約1.1倍にあたります。
そのうち63%は、相続登記の未了が原因です。
つまり、所有者不明土地問題の主犯格が「相続登記の放置」なのです。
道路整備・災害復旧・再開発の際に、土地の持ち主と連絡が取れずに手続きが進まない。
こうした社会的な問題が積み重なり、国が義務化に踏み切りました。
義務化のルール——誰が、いつまでに、何をする?
誰が対象か
不動産(土地・建物)を相続した相続人全員が対象です。
法定相続による場合も、遺産分割協議による場合も対象です。
いつまでに登記するか
シンプルに言うと——不動産を相続したと知った日から3年以内に、名義を変える。これが基本です。
不動産登記法第76条の2第1項
「所有権の登記名義人について相続の開始があったときは、当該相続により所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から3年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。遺贈により所有権を取得した者も、同様とする。」
つまり「自分が相続人だとわかった日」から起算されます。亡くなった日ではありません。
遺産分割の話し合いが後からまとまった場合も、まとまった日から3年以内に改めて名義変更の義務があります(同条第2項等)。
「申告登記」という、ひとまず期限をしのぐ方法もありますが、名義は変わらないため先延ばしにすぎません。今動ける方はそのまま本登記まで進めるのがおすすめです。
→ 申告登記の詳細・使いどころについてはこちらのセクションをご覧ください。
過去の相続も対象——経過措置の期限
令和6年4月1日より前に発生した相続も、義務化の対象です。
過去の相続が対象の場合、期限は令和9年3月31日(2027年3月31日)です。
相続登記の期限フロー
| 相続が発生 | ▶ |
令和6年4月1日以降の相続
→ 取得を知った日から3年以内 令和6年4月1日より前の相続
→ 令和9年3月31日まで(経過措置) |
▶ | 相続登記の申請 |
|
✅ 期限内に申請
義務履行 |
⚠ 期限を過ぎると
10万円以下の過料 |
| 相続の発生時期 | 期限 |
|---|---|
| 令和6年4月1日以降 | 不動産取得を知った日から3年以内 |
| 令和6年4月1日より前 | 令和9年3月31日まで(経過措置) |
「数十年前の相続を放置している」という方は、令和9年3月末が目前に迫っています。
放置しているご実家・農地に心当たりがある方は、早めに動くことをおすすめします。
罰則——10万円以下のお金が取られる?
正当な理由なく義務に違反した場合、10万円以下のお金が取られます
(不動産登記法第164条第1項)。
この記事を書いている令和8年4月時点では、過料が科された事例はまだ一件もありません。
義務化の施行が令和6年4月で、3年の猶予があるため、そもそも期限切れがまだ発生していないからです。
実際に問題になるのは、早くても令和9年4月以降です。
ただ、本当に過料が来るのかどうか、正直なところわかりません。
同じく登記義務があって過料規定もある表題登記(新築・増築・減築・滅失など、変更があった日から1ヶ月以内が義務)については、
実際に過料が科されたという話をほとんど聞きません。
一方で、役員変更などを怠った会社の商業登記については、バンバン過料が来ています。
個人には甘く、法人には厳しいのか。
それとも、相続登記の促進という政策目的のために個人にも積極的に科すのか。
どういう運用になるかは、まだ誰にもわかりません。
ただ、来るかもしれないお金を気にして動けないよりは、さっさと登記を済ませてしまう方が気楽です。
「正当な理由」があれば過料を免れるか
法律上、「正当な理由」がある場合は過料を科されません。
法務省が示す正当な理由の例は、以下のとおりです。
- 相続人が極めて多数で、戸籍収集に多くの時間を要する場合
- 遺言の有効性や遺産の範囲について、相続人間で争われている場合
- 本人が重病その他これに準ずる事情がある場合
- 配偶者暴力の被害者で、避難を余儀なくされている場合
- 経済的な困窮で、費用の負担能力がない場合
ただし、「面倒だから」「知らなかったから」は正当な理由に当たりません。
知った以上は、期限内に対応することをおすすめします。
相続人申告登記——どうしても間に合わない場合の逃げ道
「遺産分割協議がまとまっていない」「戸籍を全部集める時間がない」——
そういったケースのために新設された制度です。
相続人であることを法務局に申し出るだけで、3年以内の申請義務を果たしたものとして扱われます。
登録免許税は無料、相続人1人が単独で申し出ることができます。
ただし、名義は変わりません。売却・担保設定には使えないため、最終的には本登記が必要です。
「申告登記でしのいで後で本登記」より、最初から本登記まで進めてしまうのがおすすめです。
詳細・使いどころ・必要書類は、相続人申告登記って何?——使いどころ・注意点・本音を解説で詳しく解説しています。
よくある思い込み——「うちは大丈夫」が一番危ない
思い込み①「固定資産税の請求書が来てるから、名義は変わってるでしょ」
これが一番多い誤解です。
相続が発生すると、蟹江町は登記を待たずに相続人を調べて、固定資産税の請求書を送ります。
配偶者や同居している方、長男・長女のもとに届くことが多いです。
だから「自分に請求書が来た=名義が自分に変わった」と思いがちなのですが、そうではありません。
登記と固定資産税は、まったく別の制度です。
名義が実際に変わっているかどうかは、登記簿謄本を見ないとわかりません。
蟹江町から津島の法務局まで取りに行くのは結構な手間ですが、
当事務所ではオンラインで即座に確認できます。
「うちの名義、どうなってるんだろう?」と思ったら、まずご相談ください。
思い込み②「土地の相続登記は済んでる。建物は……してないかも」
土地の登記は完了しているのに、建物の登記が抜けているケースがちょこちょこあります。
特に注意が必要なのが、古い建物や未登記の建物です。
固定資産税がかからないほど古い建物は、登記自体が存在しないことがあります。
さらに増築をしている場合、固定資産税評価証明書の記載と現況がズレていることも。
増築の証明ができないと、新築相当の課税がされるケースもあるため、要確認です。
「土地は大丈夫、でも建物は……」と思い当たる方は、一度確認することをおすすめします。
登記が進まない2つのパターン——そして今、義務化がやってきた
蟹江町で相続登記の相談を受けていると、「なぜ進んでいないのか」の理由は大体2つに分かれます。
パターン①:思い込みで、問題と気づいていない
「畑やっとるもんで、もうあの畑はあいつのもんだろ」
誰かが継続して農地を耕しているとき、
「使っている人のものになっているはず」と思い込んでいるケースがあります。
でも、実際に耕しているかどうかと、登記の名義は別の話です。
手続きをしていなければ、名義は亡くなった方のまま変わっていません。
「実家は長男が継ぐんだから、長男名義になってるでしょ」
「長男が家を継ぐ」という意識は今も根強く、
「だから名義も自動的に長男になっている」と思っている方がいます。
でも今の法律にそういうルールはありません。
ちゃんと相続の手続きをしないと、名義はそのままです。
「夫が亡くなったんだから、財産は全部私のものでしょ」
実は、お子さんがいる場合は配偶者だけのものにはなりません。
子どもと一緒に分けることになっています。
(→ 誰が相続人になるか・相続の割合については法定相続人とは?で解説しています)
「全部自分のものになっているはず」と思い込んだまま何年も経って、
いざ動こうとしたら手続きが複雑になっていた——そういうケースがあります。
パターン②:本当に揉めていて、手が出ない
疎遠な相続人がいる。仲の悪い兄弟姉妹がいる。認知症の家族がいる。
相続の手続きは、相続人全員の合意がなければ進められません。
1人でも動かなければ、全員が足止めを食らいます。
「どうしようもないから」と何年も放置したまま——
それが積み重なっているケースが、蟹江町でも少なくないのが実情です。
どちらも、今のうちに動くしかない
どちらのパターンも、義務化で「そのまま放置」は通用しなくなりました。
相続人申告登記でひとまず期限をしのぐこともできますが、正直それは問題の先延ばしです。
思い込みを解いて、揉め事に向き合って、今のうちに本登記まで済ませてしまう——
それが一番スッキリします。
「動けない理由がある」という方こそ、早めにご相談ください。
状況を整理して、現実的な手順を一緒に考えます。
→ 数次相続など、放置の結果ついてはこちらの記事もご覧ください:数次相続とは
手続きの流れと費用
相続登記の手続きは、概ね以下の流れです。
- 相続人の確定(被相続人の出生から死亡までの戸籍を収集)
- 遺産分割協議書の作成(相続人全員で協議・押印)
- 登記申請書の作成・提出
蟹江町の不動産は、名古屋法務局 津島支局が管轄です。
費用については、登録免許税(固定資産評価額の0.4%)と司法書士への報酬が主な内訳です。
詳細はこちらの記事をご覧ください。
必要書類の詳細はこちらの記事をご覧ください。
「自分でやってみようかな」と思った方は、相続登記って自分でできますか?もあわせてご覧ください。
まとめ——登記を済ませた先の未来
- 令和6年4月1日から相続登記が義務化(不動産登記法改正)
- 期限:不動産取得を知った日から3年以内
- 過去の相続も対象:経過措置で令和9年3月31日まで
- 違反すると10万円以下の過料(正当な理由があれば免除)
- 遺産分割がまとまっていなくても相続人申告登記でひとまず義務を果たせる(登録免許税は無料)
- 蟹江町は農地の放置が多い。放置すると売却・次の相続で困る
- 蟹江町の管轄:名古屋法務局 津島支局
登記を済ませた先にあるもの
相続登記は「やらないと罰則がある」だけの話ではありません。
登記を済ませれば、実家の名義が自分の手に戻ります。
売る・貸す・建て替える——あらゆる選択肢が、自分の判断でとれるようになります。
そして何より、子の代に同じ手続きを持ち越さずに済みます。
放置された相続登記は、世代を重ねるほど重くなります。
今のあなたの一手が、次の世代の負担を消す——そう思って動くと、見え方が変わってきます。
関連記事:
– 親が亡くなったら何をする?期限別・相続手続きのやることリスト
– 相続登記に必要な書類一覧——「あると思ったら足りなかった」を防ぐために
– 相続登記の費用はいくら?登録免許税・司法書士報酬・実費の内訳を解説
– 数次相続とは——相続手続き中に相続人が亡くなったらどうなる?
– 相続土地国庫帰属制度——いらない土地を国に返せる?
相続をおわりに。
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📞 電話:052-209-6965(平日9:00〜18:00)
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蟹江町で相続のことなら、蟹江町在住司法書士の私、尾張がすぐに対応いたします。
【執筆者】
司法書士尾張由晃 司法書士法人せと事務所代表
愛知県司法書士会 登録番号:第1981号
蟹江町在住、実務歴10年以上。同じ地元民として、単なる事務作業では
ない「生涯に寄り添うサポート」をお約束します。
参考:公的機関の一次情報
– 相続登記の申請義務化について(法務省)
– 相続人申告登記について(法務省)
– 相続登記が義務化されました(法務局)
– 不動産登記法(e-Gov法令検索)
– 所有者不明土地の実態把握の状況について(国土交通省)
– 不動産登記簿における相続登記未了土地調査について(法務省)
最終更新日:2026年4月28日
