ライン公式はコチラ
おわりのひとくちメモ おわりのひとくちメモ
2026.04.19 その他

特別受益とは——生前贈与が相続に影響する?遺産分割への向き合い方

特別受益とは——生前贈与が相続に影響する?遺産分割への向き合い方

「兄だけ、家を建てるときに1,000万円出してもらったんです。相続のときにその分を考慮できませんか?」

遺産分割の相談をしていると、こういった話が出てくることがあります。

「相続をおわりに。」司法書士の尾張です。

法律上、被相続人(亡くなった方)から生前に受けた贈与は「特別受益」として、
相続分の計算に影響する場合があります。

ただし、実務上は「みんなが納得していれば問題なく進む」のが大原則です。
「持ち戻し」「特別受益」という法律の言葉を使う場面は、実は揉め案件のサインでもあります。

この記事では、特別受益の考え方と、相続の場でどう向き合うかを整理します。


目次

  1. 特別受益とは何か
  2. 具体的にどう計算するか
  3. 協議書にはどう書くか
  4. 「持ち戻し」を主張するとどうなるか
  5. 親の立場で考えること——生前に手を打てる
  6. 不公平感を覚えている兄弟の立場で考えること
  7. まとめ

特別受益とは何か

特別受益とは、相続人が被相続人から生前に受けた特別な利益のことです。根拠は民法第903条第1項です。

民法第903条第1項
「共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、第900条から第902条までの規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。」

受けた贈与を相続財産に「加算」してから計算し、その人の相続分から「差し引く」——これが特別受益の持ち戻し計算です。

主に以下のようなものが該当します。

  • 住宅購入・建設資金の援助
  • 事業資金の贈与
  • 高額な学費の負担(通常を超える場合)
  • 結婚・養子縁組のための贈与

特別受益がある場合、その分を相続財産に加え直して(持ち戻して)計算し、
受益を受けた相続人の相続分から差し引く
という考え方があります。

ただし、これはあくまで「考え方」です。
相続人全員が納得すれば、持ち戻しをせずに遺産分割を進めることも自由にできます。


具体的にどう計算するか

たとえばこんな場合を考えます。

  • 相続財産:3,000万円
  • 相続人:長男・次男の2人
  • 長男は生前に住宅資金として1,000万円の贈与を受けていた

持ち戻して計算する場合:

みなし相続財産 = 3,000万円 + 1,000万円 = 4,000万円
この4,000万円を基準に法定相続分(1/2ずつ)で計算します。
各自の本来の取り分 = 各2,000万円

長男の取り分 = 2,000万円 − 1,000万円(既受益分)= 1,000万円
次男の取り分 = 2,000万円

持ち戻しをしない場合(全員納得):

長男・次男それぞれ1,500万円ずつ、または話し合いで決めた割合で分ける。

どちらも「間違い」ではありません。
相続人全員が納得した内容で協議書を作れば、それが正解です。


協議書にはどう書くか

遺産分割協議書には、決まった結果だけを書きます。

「長男は生前に1,000万円の贈与を受けていたため、今回の相続では次男が1,000万円多く取得する」——
こういった経緯や理由は、協議書に書く必要はありません。

むしろ書かない方がいい。
過去の贈与の話を書面に残すことで、後から掘り返される火種になることがあります。

誰が何を取得するか、という結果だけを明確に書くのが協議書です。


「持ち戻し」を主張するとどうなるか

持ち戻しを主張するのは、損をしていると感じている側です。
その主張を認めてもらうには、相手(贈与を受けた側)の合意が必要です。

合意が得られなければ、調停・審判へと進むことになります。
これは弁護士の領域です。

また、被相続人が遺言で「この贈与は持ち戻さなくていい」と免除の意思表示をしていた場合、
原則として持ち戻しはできません。
遺言にそういった記載がなくても、状況によって黙示の免除があったと裁判所が判断するケースもあります——
ただしそれも、裁判で争って初めて出てくる話です。

配偶者間の居住用不動産は「持ち戻し免除」が推定される

2019年施行の民法改正で、婚姻期間20年以上の夫婦の一方が他方に対し、
居住用の建物・敷地を生前贈与または遺贈した場合は、
持ち戻し免除の意思表示があったものと推定されることになりました(民法第903条第4項)。

「長年連れ添った配偶者に住居を残してあげたい」という意思を法律が後押しする規定です。
配偶者が絡むケースでは、この規定の有無で結論が変わることがあります。

いずれも揉め案件です。
「持ち戻し」という言葉が出てきた時点で、早めにご相談ください。


親の立場で考えること——生前に手を打てる

「子どもに生前贈与をしてきたが、相続のときに揉めないか心配」——
そう感じている親御さんは、今のうちに対策できます。

遺言書で、贈与の経緯や相続分の調整について意思を残しておくことができます。
「なぜこの子に多く渡したのか」「この分は特別受益として考慮してほしい(またはしなくていい)」——
そういった意思を、生きているうちに形にしておくことが、残された子どもたちの助けになります。

亡くなってから間を取り持てる人はいません。

親がいる間にしかできない対策があります。
「うちは大丈夫だろう」と思っていても、一度ご相談ください。


不公平感を覚えている兄弟の立場で考えること

「自分だけ損をしている気がするが、どうすればいいかわからない」——
そういう方は、まず専門家に状況を整理してもらうことをおすすめします。

当事務所でできること:

  • 生前贈与が特別受益に当たるかどうかの判断
  • 遺産分割協議書の案を作成し、話し合いのたたき台を提供
  • 話し合いが進まない場合は、弁護士をご紹介

相続で揉めると、一生禍根が残ります。
「感情的にぶつかり合う」前に、まず冷静に整理する場として活用してください。

いきなり弁護士に相談してガチンコ勝負に持ち込むより、
まず当事務所で状況を整理して、ソフトランディングを目指す——
そういう使い方もできます。


まとめ

  • 特別受益とは、生前に受けた住宅資金援助・事業資金等の贈与(民法第903条)
  • 持ち戻して計算する方法があるが、全員が納得すれば持ち戻しなしで協議もできる
  • 協議書には結果だけ書く。経緯・理由は書かない
  • 「持ち戻し」を主張し合う状態=揉め案件。弁護士の領域
  • 親の立場なら今のうちに遺言で対策できる。亡くなってからでは遅い
  • 不公平感がある場合は、まず当事務所で整理してからソフトランディングを目指す

関連記事:
遺産分割とは?方法の種類と決め方
寄与分とは——「面倒を見てきたのに同じ取り分はおかしい」に答えます
遺留分とは?よくある勘違いと遺言書作成時の考え方
私に遺言書は必要?
生命保険金と相続


相続をおわりに。

「うちの場合はどうなんだろう?」と思ったら、まずはお気軽にご相談ください。

📞 電話:052-209-6965(平日9:00〜18:00)
📱 LINE:こちら(24時間受付・相談無料)
📧 メール:owari@shihouseto.com

蟹江町で相続のことなら、蟹江町在住司法書士の私、尾張がすぐに対応いたします。


【執筆者】
司法書士尾張由晃 司法書士法人せと事務所代表
愛知県司法書士会 登録番号:第1981号
蟹江町在住、実務歴10年以上。同じ地元民として、単なる事務作業では
ない「生涯に寄り添うサポート」をお約束します。

司法書士尾張由晃のプロフィール詳細はこちら


参考:公的機関の一次情報
民法第903条(e-Gov法令検索)

最終更新日:2026年4月27日

Copyright ©︎ Setojimusho. All rights reserved.