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2026.04.08 その他

遺留分とは?よくある勘違いと遺言書作成時の考え方を解説

遺留分とは?よくある勘違いと遺言書作成時の考え方を解説

「遺留分があるから、私もいくらかもらわなきゃいけないんですよね?」

「相続をおわりに。」司法書士の尾張です。

このご質問、相談会でとてもよくいただきます。
結論から言うと、遺留分は「もらわなきゃいけない」制度ではありません。

遺留分についての勘違いは根深く、きちんと理解しておかないと
遺言書の設計にも、相続の手続きにも影響します。
この記事で整理しておきましょう。

→ そもそも遺言書が必要かどうかはこちらの記事をご覧ください。


目次

  1. 遺留分とは
  2. よくある2つの勘違い
  3. 遺留分減殺請求権→遺留分侵害額請求権——令和の改正と時効
  4. 遺言書作成時の遺留分への考え方
  5. まとめ

遺留分とは

遺留分とは、遺言書があった場合でも、一定の相続人に法律上保障される最低限の取り分です。根拠は民法第1042条です。

民法第1042条第1項
「兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、次条第一項に規定する遺留分を算定するための財産の価額に、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合を乗じた額を受ける。一 直系尊属のみが相続人である場合 三分の一 二 前号に掲げる場合以外の場合 二分の一」

つまり、原則として相続財産の2分の1が遺留分として保障されます(直系尊属のみの場合は3分の1)。

「全財産を長男に」という遺言書があっても、
他の相続人が遺留分を請求すれば、その分の金銭を受け取ることができます。

誰に遺留分があるか

相続人 遺留分
配偶者 あり
子(直系卑属) あり
親・祖父母(直系尊属) あり(子がいない場合)
兄弟姉妹 なし

兄弟姉妹には遺留分がありません。
これは相談の場でよく驚かれる点です。
「兄弟に全部は渡したくない」という場合でも、
遺言書で指定してしまえば兄弟姉妹は遺留分を主張できません。

遺留分の割合

遺留分の総体的割合は、原則として相続財産の 1/2 です。

ただし、直系尊属のみが相続人(子も配偶者もなく、父母や祖父母だけが相続人)の場合は 1/3 になります(民法第1042条第1項)。
個別の遺留分は、この総体的割合に各自の法定相続分を乗じて計算します。

具体例:財産3,000万円・配偶者+子2人

法定相続分 遺留分(×1/2)
配偶者 1,500万円(1/2) 750万円
長男 750万円(1/4) 375万円
次男 750万円(1/4) 375万円

この状態で「全財産を長男に」という遺言書があった場合、
配偶者は750万円、次男は375万円を遺留分として請求できます。


よくある2つの勘違い

勘違い①「遺産分割協議でも遺留分は関係する」

遺留分は、遺言書がある場合にだけ問題になる制度です。

遺言書がなく、相続人全員で遺産分割協議をする場合、
どんな分け方をしても遺留分は関係ありません。

相続人全員が合意すれば、法定相続分とまったく違う割合で分けても構いません。
「長男に全部」でも、「全員均等に」でも、話し合いで決めたものが有効です。

ついでに言うと、法定相続分も「必ずこのとおりに分けなければならない」という数字ではありません。
法定相続分は、遺言書も協議もない場合の「デフォルトの割合」です。
協議で全員が合意すれば、どんな割合でも構いません。

勘違い②「遺留分は請求しなければならない」

遺留分は、請求したい人が請求する制度です。

遺言書で自分の遺留分を侵害されていても、
「請求したくない」「もめたくない」「そもそも興味がない」という場合は、
一切請求しなくても構いません。

黙っていれば、遺言書の内容がそのまま実現されます。

以前こんなご相談がありました。

遺産分割協議の場で「遺留分があるから、私もいくらかもらわなきゃいけないんですよね?」とおっしゃる方がいました。
でも実際には遺言書はなく、遺産分割協議の場。
遺留分はそもそも関係ない状況でした。
その方は「ではもらわなくていい」という意思をお持ちで、
遺留分という言葉だけが独り歩きして混乱されていたのです。


遺留分減殺請求権→遺留分侵害額請求権——令和の改正と時効

令和元年7月1日施行の改正

旧法では「遺留分減殺請求権」という名称で、
遺留分を侵害された相続人が請求すると、財産そのものを取り戻す(現物返還)のが原則でした。

たとえば、不動産を遺言で長男に渡したケースで次男が遺留分を主張すると、
不動産が長男と次男の共有になる——という複雑な結果が生じていました。

令和元年(2019年)7月1日施行の相続法改正で、これが「遺留分侵害額請求権」に変わりました。

改正後のルール:遺留分を侵害された相続人が請求できるのは金銭のみです。
不動産が共有になるような事態は起きなくなりました。

なお、受遺者・受贈者が金銭をすぐに用意できない場合は、
裁判所に対して支払いの期限猶予を求めることができます。

「遺留分減殺請求権」という古い言葉を使っている方もいますが、
現在は「遺留分侵害額請求権」が正しい名称です。

時効・期間制限

遺留分侵害額請求権には期限があります(民法第1048条)。

  • 相続開始と遺留分侵害を知った時から1年で時効消滅
  • 知らなかった場合でも、相続開始から10年で消滅

「いつでも請求できる」というわけではありません。
遺言書の内容を知ったら、早めに対応を検討する必要があります。


遺言書作成時の遺留分への考え方

遺言書を作るとき、遺留分のある相続人がいる場合には、
「遺留分をどうするか」を決めておく必要があります。
方針は大きく2つです。

①遺留分を全無視する

遺留分を考慮せずに遺言書を作り、請求が来たら対応する、という方針です。

こちらでよい場合は次の3つのケースです。

ケース1:そもそも遺留分侵害請求が来る可能性が低い場合

相続人の中に行方不明の方や、障害等で手続きが難しい方がいるケース。
そもそも請求してくる可能性が低いため、遺留分を全無視した遺言書を書くことがあります。

ケース2:相続そのものを知らせたくない場合

相続人に相続の発生を知らせずに進めたい事情がある場合。
知らせなければ遺留分の請求も来ません。

ケース3:特定の人に多めに渡したい・請求されたらしょうがない場合

「長男に多めに渡したい」という気持ちが優先で、
遺留分侵害の請求が来ても受け入れる覚悟がある場合。
遺留分を計算せずに希望どおりの遺言書を書くことで問題ありません。

②遺留分を配慮した内容で遺言書を作る

遺留分を織り込んだ内容で遺言書を設計する方針です。

ケース1:揉めることが目に見えている場合

すでに相続人間の関係が悪く、揉めることが予想される場合に遺言書を作るケースがあります。
でも、遺留分を無視した内容で作ると、遺留分の算定をめぐってまた揉める可能性があります。

「揉めたくなくて遺言書を作ったのに、また揉める」では本末転倒です。

ケース2:相続人間が仲悪く、手続きを相続人同士でやらせたくない場合

相続人間の仲がひどく悪くて、遺産分割協議ができないくらいのケースで遺言書を作ることがあります。

でも、遺留分を無視した遺言書を作ると、
今度は遺留分侵害の対応を仲の悪い相続人同士でやらなければなりません。
めっちゃ嫌ですよね。

こういう場合は、最初から遺留分相当額を各相続人に渡す内容の遺言書を作り、
遺言執行者を指定しておく
のが合理的です。
遺言執行者が手続きを進めるため、相続人同士がほとんどやり取りをする必要がなくなります。

換価分割が使えるなら、それが一番すっきりします。

不動産など分けにくい財産がある場合、遺言書で「全部売却して現金で分ける」
(換価分割)と指定しておけば、揉める理由がなくなります。
「不動産の評価をどうするか」という争点がそもそもなくなるからです。

遺言書で財産の換価・分配を指定するこの方法を、清算型遺贈と呼びます。
清算型遺贈を使う場合、売却手続きを進める遺言執行者の指定が必須です。
遺言執行者なしには不動産の売却手続きが進められないためです。


まとめ

遺留分への対応は、家庭の状況・相続人間の関係・渡したい財産の内容によって
まったく違う判断になります。

「全無視でいい」ケースもあれば、「最初から折り込んだ方がいい」ケースもある。
正解は家庭ごとに違います。

「うちの場合はどうすればいい?」と思ったら、ぜひご相談ください。


まとめ

  • 遺留分は遺言書がある場合にだけ関係する。遺産分割協議には無関係
  • 遺留分は請求したい人が請求する制度。もらわなきゃいけない権利ではない
  • 権利者は配偶者・子・直系尊属兄弟姉妹には遺留分がない
  • 割合は原則法定相続分×1/2(直系尊属のみの場合は×1/3)
  • 令和元年7月1日の改正で金銭請求のみに。不動産が共有になる問題は解消
  • 時効は知った時から1年・相続開始から10年
  • 遺言書作成時の方針は全無視か配慮か。家庭の状況によってまったく違う

相続をおわりに。

「うちの場合はどうなんだろう?」と思ったら、まずはお気軽にご相談ください。

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蟹江町で相続のことなら、蟹江町在住司法書士の私、尾張がすぐに対応いたします。


【執筆者】
司法書士尾張由晃 司法書士法人せと事務所代表
愛知県司法書士会 登録番号:第1981号
蟹江町在住、実務歴10年以上。同じ地元民として、単なる事務作業では
ない「生涯に寄り添うサポート」をお約束します。

司法書士尾張由晃のプロフィール詳細はこちら


参考:公的機関の一次情報
民法1042条・1048条(e-Gov法令検索)
相続法の改正について(法務省)

最終更新日:2026年4月27日

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