「公正証書遺言を作りたいのですが、手続きはどうすればいいですか?」
「相続をおわりに。」司法書士の尾張です。
このご質問、とてもよくいただきます。
手続き自体の答えは、わりとシンプルです。
問題は、もう一つの問いの方です。
「では、何を書きますか?」
公証人は、あなたが決めた内容を公正証書にしてくれる専門家です。
「こういう内容で作りたい」をあなた自身が整理してから持ち込む必要があります。
そして、この「内容を決めること」が、実は一番大変なのです。
→ 公正証書遺言を選ぶべき理由・3種類の比較はこちらの記事をご覧ください。
目次
公正証書遺言の作成の流れ(自分でやる場合)
自分で作る場合の流れは、おおむね次のとおりです。
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公証役場に問い合わせる
公証役場はどこでも構いません。管轄という概念がなく、
ご自宅の近く、お子さんの住所地近く、使い慣れた場所、どこでも大丈夫です。
連絡して遺言書を作りたい旨を伝えれば、必要書類や日程の相談ができます。 -
内容を固める
誰にどの財産を渡すかを自分で整理します。
ここが最も時間のかかるステップです(後述)。 -
必要書類を集める
戸籍・登記事項証明書・印鑑証明書などを揃えます。 -
公証人に文案を作成してもらい確認する
内容を伝えると公証人が文案を作ってくれます。
確認して問題なければ署名日を予約します。 -
証人2名と一緒に公証役場へ
証人が立ち会い、公証人の前で遺言者が署名して完成です。
手順としてはこれだけです。
難しいのは、2番と5番です。
必要書類
公正証書遺言の作成に必要な主な書類は以下のとおりです。
遺言者ご本人のもの
– 印鑑証明書(発行後3か月以内のもの)
– 戸籍謄本
財産を受け取る方(相続人・受遺者)のもの
遺言書には相手の住所・氏名・生年月日を記載するため、それが確認できる書類が必要です。
相続人であれば住民票を取得するのが一般的です(戸籍謄本だけでは住所がわからないためです)。
問題になるのが、相続人以外の方(内縁パートナー・友人など)への遺贈を考えている場合です。
直系親族であれば戸籍謄本や戸籍附票を取得できますが、
それ以外の方の住民票などは本人か家族にしか原則として取得できません。
これは司法書士でも同じです。職務上請求のような方法が使える書類ではありません。
「住所・生年月日をご本人に用意してもらう」という手間が発生します。
想定外のひと手間がかかる場面です。
財産に不動産が含まれる場合
– 登記事項証明書
– 固定資産税評価証明書
証人2名の情報
– 氏名・住所・生年月日・職業
公証役場によって求められる書類が細かく異なることがあります。
事前に確認するか、司法書士に相談するのが確実です。
「内容を自分で決める」——ここが一番の難所
公証人は、あなたが用意した内容を公正証書という形式にしてくれます。
でも、「何を書くか」は自分で決めるしかありません。
これが、公正証書遺言の一番難しいところです。
財産をあげる相手が先に亡くなっていたら?
遺言書を作ってから何年・何十年後かに亡くなるのが普通です。
その間に、遺言書に「財産をあげる」と書いた相手が先に亡くなってしまうことがあります。
このとき、その部分の遺言は効力を失います。
つまり、その財産については遺言がなかったのと同じ状態になります。
実際にあった例を紹介します。
相続人の一人が行方不明で、手続きを進めるためには全員のはんこが必要になります。
困った遺言者さんが「だったら配偶者に全財産を相続させる遺言書を作れば、行方不明者を飛ばして手続きできる」と考えました。
遺言書を作ったのですが——その後、配偶者の方が先に亡くなってしまいました。
結果として、遺言書のその部分は効力を失い、
行方不明の相続人のはんこが結局また必要になりました。
遺言書を作った意味がゼロ。
書いた手間も費用も時間も、全部消えてしまったのです。
予備的遺言——専門家が必ず考えること
このような事態を防ぐために、専門家が必ず検討するのが「予備的遺言」です。
たとえばこういう一文を加えます。
第〇条 前条の長男が遺言者より先に死亡した場合には、長男の子に相続させる。
シンプルな一文です。
でも、相続の仕組みを理解していないと、必要だと気づくことができません。
「書き直せばいいんじゃないの?」と思われるかもしれません。
書き直しは可能ですが、そのたびに費用・時間・手間がかかります。
公証役場に出向いて、また証人を2名揃えて……と最初から作り直しです。
予備的遺言は、「最初から先を読んで書く」ための技術です。
遺留分は計算しましたか?
遺言書で「長男に全部」と書いた場合、
他の相続人から遺留分侵害額の請求が来る可能性があります。
請求されてから対応するのか、事前に対策を取るのか——
方針を決めるためには、まず遺留分の計算が必要です。
→ 遺留分についてはこちらの記事で解説しています。
「相続させる」と「遺贈する」——どちらで書くかで手続きが変わる
不動産を誰かに渡すとき、遺言書の書き方には2種類あります。
| 書き方 | 対象 | 手続き |
|---|---|---|
| 「相続させる」 | 相続人(法律上の相続人) | 相続人だけで登記できる。他の相続人のはんこ不要 |
| 「遺贈する」 | 相続人以外(内縁パートナー・友人等) | 法定相続人全員のはんこが必要 |
相続人以外の方(たとえば内縁パートナー)に不動産を渡したい場合、
「遺贈」という形になり、法定相続人全員が手続きに協力する必要があります。
渡したい相手が遺言執行者に選ばれている場合、また事情が変わります。
「誰に・どの形で・誰が手続きを進めるか」のセットで設計しないと、
遺言書通りに実現できないことがあります。
負担付遺贈——「もらう代わりに○○すること」
「自宅を長男に相続させる代わりに、残された母の生活費を毎月支払うこと」のように、
財産の取得に条件(負担)を付ける遺言を負担付遺贈(負担付相続)といいます。
負担の内容が実現されない場合、利害関係人が家庭裁判所に取消しを請求できます(民法第1027条)。
ただし、「面倒を見ること」のような曖昧な表現は避けてください。
「面倒を見たかどうか」の判断が主観的になり、後々争いの原因になります。
「月〇万円を支払う」「同居して日常生活を支援する」など、できるだけ具体的に書くことが重要です。
また、財産の価値と負担のバランスも重要です。
負担が財産の価値を超えるほど重い場合、受遺者は遺贈を放棄することもできます(民法第1002条)。
遺言執行者——選んだ方がいい?
遺言執行者とは、遺言の内容を実現するために手続きを進める人のことです。
選んでおくと、相続手続きがスムーズになる場面が多いです。
ただし、注意点があります。
遺言執行者には、相続人への通知義務があります(民法第1007条)。
「できるだけ他の相続人に内密に進めたい」という場合でも、
遺言執行者は相続人全員に遺言の内容を知らせる義務を負います。
完全に内密のまま進めることはできません。
「誰を遺言執行者にするか」「どこまで開示するか」の設計が必要になります。
証人2名の手配
公証役場での作成には、証人が2名必要です。
相続人・受遺者(財産をもらう人)・未成年者はなれません。
「証人が見つからない」という場合、公証役場が紹介してくれることもあります。
ただ、以前こんな場面に居合わせたことがありました。
別の手続きで公証役場に出向いたとき、
ちょうど遺言書の作成をされているご依頼者さんがいらっしゃいました。
役場から紹介された方が証人として来られていて、
遺言者さんとは初顔合わせのはずなのに、席について早々に
「今日はよろしくお願いします〇〇協会の〇〇と申します。
もしよろしければ、当協会にご寄付をいただけますと…」
とお話しされていました。
遺言者さんが明らかに困惑されていて、「これはなかなか…」と思ったのを覚えています。
司法書士に依頼するとどう変わるか
司法書士に依頼した場合の流れは、こうなります。
①現状のヒアリング
家族関係・財産の内容・悩みや希望を丁寧に聞きます。
「実はこういう事情があって…」という話こそ、設計に欠かせません。
②リスクの洗い出しと方針の提案
現状を整理して、「相続が発生したときに何が起きるか」を説明します。
どういう遺言を書けばどう解決できるか、選択肢ごとの結果をお伝えします。
最終的にどうするかはご本人に決めていただきます。
「遺言書を作らなくても大丈夫です」という結論になることもあります。
③遺言書の文案作成
ご希望と状況をもとに、予備的遺言・遺留分への対応・遺言執行者の選定まで含めて文案を作ります。
内容をご確認いただき、OKをもらってから公証役場に持ち込みます。
④公証役場への同行と証人
一緒に公証役場へ行き、私と事務員が証人を務めます。
証人を別途手配する必要はありません。
⑤送迎対応
体が不自由な方・免許を返納された方など、移動が心配な場合には送迎も対応しています。
公証役場に出張してもらうより費用を抑えられる場合があります。
ひとことで言えば、「何を書くか」の設計から「遺言書が完成するまで」を全部一緒にやります。
費用の目安
公証人手数料は、財産の価額に応じて決まります。
詳細な計算方法と費用表は前の記事(A9)で解説していますので、そちらをご覧ください。
ざっくりとした目安:
– 財産総額が3,000万円程度の場合 → 公証人手数料だけで約5万円前後
– これに司法書士への報酬が加わります
司法書士報酬は、財産の内容や複雑さによって変わります。
まずはお気軽にご相談ください。お見積もりは無料でお出しします。
なお、公証人に出張してもらう場合(基本手数料×1.5倍+日当・旅費)と
司法書士に依頼して自分は公証役場に行くだけにする場合を比べると、
トータルでさほど変わらないか、むしろ安くなることもあります。
公証役場ってどんなところ?
「一生に何度も行かない場所だし、なんか緊張する……」
そういう方、結構いらっしゃいます。
大丈夫です。普通の役場です。
公証人は、裁判官・検察官などを経験した方が多く、
経験豊富で、どんな話を聞いても動じずに穏やかに対応してくれる方ばかりです。
ちなみに、公証役場によってかなり雰囲気が違います。
病院の受付みたいに窓口が完全に仕切られているところもあれば、
公証人が一人だけの法律事務所みたいなこぢんまりしたところもあります。
蟹江町から一番近いのは名古屋駅前公証役場です。
私は遺言書・定款認証など、毎月のようにお世話になっています。
「司法書士の尾張です」と入っていくと「尾張先生こんにちは〜!」と言っていただけるくらい、
フレンドリーな雰囲気の役場です。
初めての方でも、一緒に行けば安心です。
まとめ
- 公正証書遺言の手続き自体はシンプル。難しいのは「何を書くか」を決めること
- 財産を渡す相手が先に亡くなるリスク→予備的遺言で対応できるが、知識が必要
- 「相続させる」と「遺贈する」の違いで、手続きの手間がまったく変わる
- 遺言執行者を選ぶと便利だが、相続人への通知義務がある点も考慮が必要
- 証人は当事務所で手配。公証役場への同行・送迎まで対応
- 蟹江町から一番近い公証役場は名古屋駅前。フレンドリーで安心
相続をおわりに。
「うちの場合はどうなんだろう?」と思ったら、まずはお気軽にご相談ください。
📞 電話:052-209-6965(平日9:00〜18:00)
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蟹江町で相続のことなら、蟹江町在住司法書士の私、尾張がすぐに対応いたします。
【執筆者】
司法書士尾張由晃 司法書士法人せと事務所代表
愛知県司法書士会 登録番号:第1981号
蟹江町在住、実務歴10年以上。同じ地元民として、単なる事務作業では
ない「生涯に寄り添うサポート」をお約束します。
参考:公的機関の一次情報
– 民法(e-Gov法令検索)
– 公証人手数料令(e-Gov法令検索)
– 公正証書遺言について(日本公証人連合会)
最終更新日:2026年4月27日
