相続人の一人と連絡が取れない——疎遠・住所不明・音信不通、状況別の進め方
「相続の手続きを進めたいんですが、相続人の一人と全く連絡が取れないんです。」
めったにないご相談ですが、出てきたときは大変な案件のひとつです。
「相続をおわりに。」司法書士の尾張です。
連絡が取れない、住所もわからない——そういう相続人がいると、遺産分割の手続きが完全に止まります。ただ、手が打てないわけではありません。状況に応じて、取れる手続きがあります。
この記事では、「連絡が取れない相続人がいる」というケースで、何ができるかを順番に整理します。
目次
- なぜ全員が必要なのか
- 「連絡が取れない」の種類を整理する
- まず住所を調べる——戸籍・住民票の第三者請求
- 住所がわかったら:手紙を送る
- 協力してもらえない場合:遺産分割調停へ
- 本当に所在不明の場合:不在者財産管理人
- 7年以上行方不明の場合:失踪宣告
- まとめ
なぜ全員が必要なのか
遺産分割協議は、相続人全員の合意がなければ成立しません。
一人でも欠けていれば、協議書は作れず、相続登記も銀行の手続きも進められません。「あの人とはもう何十年も会っていないから、抜きで進めたい」というお気持ちはわかりますが、法律上、それはできません。
だからこそ、連絡が取れない相続人がいるとわかった時点で、早めに対処を考える必要があります。
「連絡が取れない」の種類を整理する
ひとくちに「連絡が取れない」といっても、実態はいくつかに分かれます。
① 連絡したくない(疎遠・感情的な問題)
「昔からあの人とは仲が悪くて」「もう30年口をきいていない」——こういうケースです。連絡先はわかっているが、心情的に連絡したくない。
気持ちはわかりますが、手続き上は連絡を取る必要があります。書類はこちらで作るので、署名・押印のお願いを送ってみて、向こうの返答を待つという流れになります。
② 連絡先・住所が全くわからない
「おじさんの連絡先を知らない」「いとこがどこに住んでいるかさえ知らない」——これはより深刻です。
親が亡くなった相続では、兄弟姉妹の連絡先はわかることが多い。難しくなるのは、祖父母が亡くなって叔父叔母が相続人になるケースや、数次相続・代襲相続でいとこが相続人になるケースです。面識もなければ、どこに住んでいるかもわからない。
相続手続きを後回しにしていると、こういう状況に陥りやすくなります。早めに動いておくことの大切さを、私、尾張が実務を通じて実感しているのはこのあたりです。
まず住所を調べる——戸籍・住民票の第三者請求
相手の住所が全くわからない場合、戸籍謄本と住民票を第三者として請求するという方法があります。
本来、他人の戸籍や住民票は取れません。ただ、共同相続人であることを証明すれば、手続きに必要な書類として取得できます。
この請求はご本人でも行えますし、司法書士に依頼いただければ代わりに進めることもできます。
住民票上に住所を置いている方であれば、この手続きで現住所を調べることができます。
住所がわかったら:手紙を送る
住所が判明したら、まずその住所に手紙を送ります。
内容は、誰の相続の件で、なぜ連絡しているのか、何のご協力をお願いしたいのか——これを丁寧に書きます。いきなり書類を送りつけるのではなく、まず状況を説明して、「一度ご連絡いただけませんか」という一歩から始めるのが基本です。
協力してもらえない場合:遺産分割調停へ
手紙を送っても返事がない、もしくは協力を断られた場合は、遺産分割調停という手続きに移ります。
調停は家庭裁判所が間に入り、調停委員を通じて話し合いを進める手続きです。強制的に相手を引っ張り出すことはできませんが、公的な場での手続きとなるため、任意の交渉より話が動きやすくなることがあります。
調停は弁護士の領域になりますので、その段階ではご紹介できる弁護士をご案内します。
本当に所在不明の場合:不在者財産管理人
手紙を送っても届かない、現地を確認したが実際にはその住所に住んでいない——こうなると、その相続人は不在者という扱いになります。
この場合、家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立てます。選任された管理人が、その不在者に代わって遺産分割協議に参加します。
ただし、ここには重要な制約があります。
不在者財産管理人は「その人の財産を守る人」ですから、その人の法定相続分を下回る分け方には同意できません。 「不在者の取り分をゼロにして手続きを進めたい」ということは、原則としてできません。法定相続分に相当する財産は、確保する必要があります。
もうひとつ、費用の問題があります。不在者財産管理人には月2〜3万円程度の報酬が発生し、不在者本人が戻ってくるまで継続します。 いつ戻るかわからない以上、費用がいつまでかかるかも見通せません。この負担を踏まえたうえで、手続きを進めるかどうかを判断する必要があります。
7年以上行方不明の場合:失踪宣告
相続人が7年以上前から行方不明で、警察への届出もしているが帰ってくる見通しがない——そういう場合は、失踪宣告という手続きを使える場合があります。
失踪宣告とは、裁判所に申し立てることで、その人を法律上、死亡したとみなす制度です。
失踪宣告には2種類あります。
| 種類 | 条件 |
|---|---|
| 通常失踪 | 行方不明になってから7年が経過している |
| 特別失踪 | 船の遭難・戦争など危難に遭遇し、その危難が去ってから1年が経過している |
失踪宣告が認められれば、その方について相続が発生したことになります。つまり、その方の相続人(配偶者や子)が新たな相続人として遺産分割協議に加わることになります。
状況が整っているなら、不在者財産管理人より失踪宣告の方がすっきり解決できる場合もあります。
まとめ
「連絡が取れない相続人がいる」といっても、状況によって取れる手続きがまったく変わります。
| 状況 | 対処 |
|---|---|
| 連絡したくないが住所はわかる | 書類を送って返答を待つ |
| 住所がわからない | 戸籍・住民票の第三者請求で調べる |
| 手紙を送っても協力してもらえない | 遺産分割調停 |
| 本当に所在不明 | 不在者財産管理人(費用・制約あり) |
| 7年以上行方不明 | 失踪宣告 |
どの手続きも、それなりの時間と費用がかかります。そしてこういった状況は、相続を長年放置していた場合に起きやすいです。数次相続・代襲相続が絡むと、面識のない遠い親族が相続人になっていることがあります。
「相続登記は早めに」という話をよくしますが、こういうケースを経験するたびに、その重要性を改めて感じます。
まずはご相談ください。状況を整理して、どの手続きが取れるか、費用はどの程度かかるか、をご案内します。
相続をおわりに。
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【執筆者】
司法書士尾張由晃 司法書士法人せと事務所代表
愛知県司法書士会 登録番号:第1981号
蟹江町在住、実務歴10年以上。同じ地元民として、単なる事務作業ではない「生涯に寄り添うサポート」をお約束します。
最終更新:2026年5月20日
