実家の名義は誰にすべきか——配偶者か子世代か、本音で比較します
「父が亡くなりました。実家の名義は誰にすればいいですか?」
蟹江町でご相談を受ける中で、本当によく聞かれる質問です。
「相続をおわりに。」司法書士の尾張です。
正直に言います。未来がわからないので、正解はわかりません。
ただ、選択肢ごとの得失は整理できます。決めるのはご本人たちですが、選択肢を知った状態で決めてほしい。この記事はそのためのものです。
目次
- 前提:相続税が発生しないご家庭向け
- 「とりあえず共有」が最悪な理由
- 配偶者(親世代)に残す場合
- 子世代に落とす場合
- 尾張の個人的な意見
- 住居確保問題——同居の子と別居の子がいる場合
- 配偶者がいない場合(子だけで分ける場合)
- 例外:配偶者が施設入居済みの場合
- まとめ
前提:相続税が発生しないご家庭向け
相続には「3,000万円+600万円×法定相続人の数」という基礎控除があり、多くの一般的なご家庭では相続税が発生しません。
この記事は相続税が発生しない家庭を対象にしています。
相続税が発生するケースでは、税理士が一次相続の段階から二次相続(次の相続)での課税も見越して分け方を設計します。その場合は税理士の指示に従ってください。尾張の事務所でも提携税理士をご紹介できます。
「とりあえず共有」が最悪な理由
「誰の名義にするか決められないから、とりあえず法定相続分で共有にしておこう」——まず、これだけはやめてください。
共有名義とは、たとえば「お母さん2分の1、長男4分の1、次男4分の1」というように、複数人が持分を持って一つの不動産を所有する状態です。
- 売るときに全員の同意が必要です。一人でも「売りたくない」と言えば、売れません
- リフォームにも全員の合意が要ります
- 共有者の一人が亡くなると、その持分がさらにその人の相続人に移ります。相続のたびに名義人が増え、10年・20年後には顔も知らない遠い親族が「共有者」になります
- 固定資産税の負担分担も誰かが管理しなければなりません
「決めなくていい」という一時的な楽さ以外に、メリットは何もありません。共有は「決めた」ではなく「先送りにした」です。先送りにした問題は、後で必ずより難しい形で出てきます。
将来どうするかを話し合い、決めていくことが、すべての出発点です。
配偶者(親世代)に残す場合
自然な発想
「お父さんが稼いだ財産なんだから、お母さんに集める」——これは自然な発想です。法定相続分は配偶者と子が同じ割合を持ちますが、全員の同意があれば配偶者が全部相続することも、子に全部渡すことも自由にできます。
配偶者に集めることは、何もおかしくありません。
デメリット:手続きが二度になる
お母さんが亡くなったとき、また相続登記が必要になります。費用も手間もかかる手続きが、2回になる。「どうせ子に行くなら早めに子の名義にしよう」という考え方はわかります。
ただ、その前に考えてほしいことがあります。
老後の資金と「実家を売る自由」
不動産を持っていない側の配偶者は、金融資産をあまり持っていないケースが多いです。老後の生活費は年金でまかなえても、施設入居となったときのまとまった資金はどこから出すか。
実家を売れば、その資金になります。
ところが——もし実家の名義がすでに子に移っていたら、お母さんは「自分の家に住まわせてもらっている」立場になります。施設に入りたい、実家を売ってその費用に充てたい、と思ったとき、名義人である子の同意が要ります。
子が快く同意してくれればいい。でも、子に気をつかって言い出せない。子の都合で話が進まない。そういうことが起きたとき、お母さんは自分で動けません。
お父さんお母さんが一生かけて築いた財産が、自由に使えない。 これ、怖くないですか。
子世代に落とす場合
メリット:手続きが一回で済む
二次相続のときに、あらためて相続登記をしなくて済みます。費用も時間も、一度で完結します。
デメリット:わからない未来に全ベットしていいか
子世代に名義を移すということは、「今は想定できないことが起きない」という前提に全財産を預けることです。
将来何が起きるかはわかりません。想定外の事情が発生したとき、すでに子の名義になっている実家をどうするかは、そのときの状況次第になります。
二次相続の手続きコストは10万円〜20万円程度です。そのコストで、配偶者の選択肢と将来の柔軟性が確保されると考えれば、高い買い物ではないかもしれません。
尾張の個人的な意見
正直に言います。
私、尾張は「お母さんが元気なうちは、お母さんの名義にしておく」派です。
お父さんお母さんが一生かけて築いた財産は、二人が死ぬまでは二人で自由に使えばいい。それが尾張の基本的な考え方です。
二次相続の手間は、そのときに対応すれば済む話です。「手続きコスト10〜20万円を惜しんで、子の先死のリスクに全資産を預ける」よりも、お母さんの選択肢を守る方が大事だと思っています。
もちろん、これはあくまで尾張の意見です。ご家庭の状況によって答えは変わります。
住居確保問題——同居の子と別居の子がいる場合
実家に残された配偶者と同居しているAさん、別に生活しているBさん、そして不動産以外に目立った財産がない——このケースが、実は一番難しい。
配偶者に財産を集中した場合、二次相続のときに問題が出やすいです。Aさんが「住んでいるから実家を相続したい」と主張すると、Bさんは「自分のもらいが少ない」と感じます。実家一棟が財産のほぼ全部という家庭では、その一棟をどう分けるかに全員の感情が集中します。
「お母さんが住んでいるから名義変更を認めたのに、お母さんがいなくなった今、なぜ兄だけが名義を取るのか」——こういう話が、親が亡くなった後に出てきます。
親がいるうちは、親の顔を立てて譲り合えていた兄弟が、親が亡くなった途端に別の顔を見せる。実際にそういうケースは決して少なくありません。
だとすれば——親の目が黒いうちに、住んでいる子(Aさん)に名義を残してあげるという選択肢もあります。Bさんには他の財産で調整するか、親が遺言書でAさんに実家を渡す意思を示しておく。
完全な正解はありませんが、「親がいなくなった後のことを、親がいるうちに決めておく」のが、揉めないための一番の手当てです。
配偶者がいない場合(子だけで分ける場合)
配偶者がすでに亡くなっていて、子だけで相続する場合——まず、全員でしっかり話し合うことが大事です。売るのか、誰かの名義にするのか、どう使うのか。結論を急がず、選択肢を並べてから決めてください。
売ることになった場合も、手続きの選び方で手間・費用・税金がかなり変わります。
全員の名義で登記してから売ると、売却手続きに全員が関与する必要があります。一方、換価分割を使えば、代表者一人の名義で登記して売却し、代金を後から分けることができます。また、誰か一人が取得して他の相続人に代償金を払う代償分割という方法もあります。同じ「売って分ける」という結果でも、手続きの選び方で負担が変わります。
注意点として、遺産分割協議が完了した後に「やっぱり分け直したい」はできません。いったん決まった分け方を変えると、贈与とみなされて贈与税の問題が生じる場合があります。最初の話し合いで慎重に決めることが大切です。
誰かが実家に住んでいる場合は、そのまま売ることはできません。住んでいる子が他の子に代償金を払って買い取る(代償分割)か、住み続けながら別の形で調整するか、という話になります。住んでいる子がいるなら、実質的に住居確保問題と同じです。
例外:配偶者が施設入居済みの場合
一つだけ、子世代への先移しを検討してもいいケースがあります。
配偶者がすでに施設に入居していて、実家に戻る予定がない場合です。
誰も住まない家の名義を配偶者が持っていても、管理の主体が曖昧になります。施設入居が確定していて、かつ配偶者本人も「子に任せたい」という意思が明確なら、子世代への名義変更を早めに進めることも選択肢になります。
まとめ
- 共有名義は最悪。「決められないから共有」は「先送り」でしかなく、後で必ずより難しい問題になる
- 配偶者名義にしておくと、お母さんの選択肢(売る・住む・施設資金にする)が守られる。二次相続コスト10〜20万は、そのための保険料と考えられる
- 子名義は手続きが一回で済む半面、子が先に死んだときに想定外の人に権利が行くリスクがある。わからない未来への全ベットになる
- 住んでいる子がいる場合、親の目が黒いうちに名義を整理しておかないと、後で揉める可能性が高い
- 子だけで誰も住んでいなければ、売って分けるのがシンプル。住んでいる子がいれば代償分割の検討を
「ウチは財産がそんなにないから大丈夫」という家庭こそ、全財産が実家一棟というケースが多い。財産が少ないからこそ、その一棟に全員の感情が集中して揉めます。
税金の計算で答えが出る世界ではないぶん、落としどころを見つけるのが難しい。だからこそ、相続が発生する前から一度相談に来てほしいのです。
相続をおわりに。
「うちの場合はどうなんだろう?」と思ったら、まずはお気軽にご相談ください。
📞 電話:052-209-6965(平日9:00〜18:00)
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蟹江町で相続のことなら、蟹江町在住司法書士の私、尾張がすぐに対応いたします。
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【執筆者】
司法書士尾張由晃 司法書士法人せと事務所代表
愛知県司法書士会 登録番号:第1981号
蟹江町在住、実務歴10年以上。同じ地元民として、単なる事務作業ではない「生涯に寄り添うサポート」をお約束します。
最終更新:2026年5月19日
